過去問を10年分やり込んでも、実は合格できない人がいます。
令和7(2025)年度の皮膚科専門医試験は、2025年12月14日(日)に東京国際フォーラムにて実施されました。試験形式は例年どおり選択問題100問+記述問題20問の全120問構成で、試験時間は9:40〜12:10の約2時間半です。
解答速報(有志の皮膚科医による速報)によると、2025年度の注目点として過去問と同一または類似の問題が約4割出題されたことが挙げられます。たとえば選択1番(ビタミンC欠乏と出血傾向:2014年50番の類問)、選択2番(神経線維腫:2020年71番の類問)など、★マーク付きの既出問題が多数含まれていました。
つまり過去問対策が基本です。
一方で、2025年度の新規・難問分野として以下のような内容が目立ちました。
これらは生物学的製剤・分子標的薬の最新情報や、制度・法規に関連するトピックです。最近の学会ガイドライン更新や新薬の添付文書情報が出題に直結しており、臨床皮膚科の「最近のトピックス」などを定期的にチェックしておく必要があります。
記述問題でも「バイオシミラー(バイオ後続品)」「Thymoma(胸腺腫)」「in-transit(転移)」「tombstone(墓石パターン)」など、英語表記の知識が問われました。記述問題は合格を左右しやすいので特に注意が必要です。
参考リンク(2025年度解答速報・解説)。
令和7(2025)年度 皮膚科専門医試験 解答速報 – それいきノート
合格ラインは公式には非公開ですが、過去データを集計すると55〜60%前後(120点満点中67点前後)が目安とされています。2024年度(令和6年度)も67/120点がボーダーとの情報が有力で、2023年度は66/120点付近が合格ライン、2022年度は68〜72/120点で合格報告が多数見られました。
これはどういうことでしょうか?
つまり全体の約56%正解できれば合格圏内に入れるという計算です。120問を60分で解くイメージではなく、150分(2時間半)をかけて丁寧に解けることを考えると、焦る必要はそれほどありません。ただし相対評価の要素があるため、受験生全体の出来によってボーダーが若干上下します。
合格率は毎年安定しており、過去6年間(2019〜2024年度)は79.9〜82.7%の範囲で推移しています。支部別の合格率をみると2024年度は東部74.5%、東京81.1%、中部80.8%、西部82.8%でした。
| 年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 推定ボーダー |
|---|---|---|---|---|
| 2024(令和6) | 289名 | 232名 | 80.3% | 約67/120点 |
| 2023(令和5) | 291名 | 236名 | 81.1% | 約66/120点 |
| 2022(令和4) | 330名 | 267名 | 80.9% | 約67/120点 |
| 2021(令和3) | – | 82.7% | – | |
| 2020(令和2) | – | 80.5% | – |
識別指数についても押さえておきたいポイントです。2024年度の試験分析(JDA Letter掲載)によれば、選択問題の平均識別指数は0.293、記述問題の平均は0.526でした。識別指数が0.55以上の問題は特に「差がつく良問」とされ、プール問題(翌年以降も使用)になりやすい傾向があります。
識別指数が高かった2024年度の問題(=来年度以降も要注意の分野)は、掌蹠膿疱症への生物学的製剤、カンジダ症の保険適用薬、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、ダリエ病、光線過敏症の5題でした。これらは繰り返し問われる良問です。
記述問題は差がつきやすいということですね。
参考リンク(試験問題の識別指数・概況分析)。
皮膚科専門医試験の概況と傾向分析 – みずけん note
多くの受験生が「過去問を解けばよい」と考えますが、解き方を間違えると合格に結びつきません。過去問から同一問題がそのまま出ることは少なく、「選択肢のひとつが形を変えて正解になる」「周辺知識が問われる」パターンが頻出します。
これは使えそうです。
具体例を挙げましょう。2021年度の選択84番では「NUDT15遺伝子多型で副作用が増す薬剤は?」(正解:アザチオプリン)が出題され、翌2022年度の選択69番では「どの遺伝子多型でリスクが高いか?」と問い方が変わりました。ただ「アザチオプリン=NUDT15を確認する」と丸暗記しただけでは2022年度の問題に対応できません。
このように、過去問を解く際は以下の3ステップで学習することが重要です。
過去問5年分が最低ラインで、理想は10年分です。2009年度まで遡れる場合、記述問題は特に古い年度から繰り返し出題される傾向が強いため、記述だけは2009年度まで遡ることを勧める合格者が多くいます。
問題別に言うと、記述問題は選択問題より識別指数が高く(0.526 vs 0.293)、正答率も全体的に高いため、ここで取りこぼすと大きなダメージになります。記述問題の英語表記(tombstone、febrile、in-transitなど)は必ず覚えておくべきです。
勉強まとめはデジタルが便利です。ScanSnapなどのドキュメントスキャナでOCR処理した教科書PDFを作成しておけば、「フィラグリン」「ロリクリン」などのキーワードで全文検索でき、試験当日に向けた復習時間を大幅に短縮できます。
参考リンク(合格者による勉強法・参考書解説)。
【2025年最新版】皮膚科専門医試験の対策!おすすめの勉強方法や参考書 – それいきノート
近年の皮膚科専門医試験において、生物学的製剤・分子標的治療薬に関する問題が増加しています。2025年度の解答を見ると、この傾向は一段と顕著です。
厳しいところですね。
たとえばアトピー性皮膚炎治療では、ネモリズマブ(ミチーガ®)はEASIスコア10以上で投与対象となる点(他の生物学的製剤はEASI≧16)が2025年度選択7番に出題されました。同じ生物学的製剤でも適応基準のスコアが異なる点は紛らわしく、正答率が分かれやすい問題です。
2025年度に出題された生物学的製剤・新薬関連の重要ポイントをまとめると以下のとおりです。
これらの情報は、各薬剤の添付文書・インタビューフォーム、または日本皮膚科学会の各疾患ガイドラインが一次情報です。試験委員会が「学会として力を入れるべき疾患・考え方」を問題に反映させる方針を明言している以上、ガイドライン改訂のタイミングには特に注意が必要です。
また、近年はAIを活用した試験対策への関心が高まっています。2024年度問題をChatGPT(GPT-4o)、Gemini、Claude 3.7 Sonnetに解かせた検証では、いずれも合格基準(55%前後)付近の正答率(57〜61%台)しか取れませんでした。AIは知識の壁打ちや説明補助には使えますが、合格のための主力ツールとは言い切れないのが現状です。
AIだけに頼るのはダメです。
参考リンク(日本皮膚科学会公式・2025年度試験概要)。
2025年度皮膚科専門医認定試験について – 公益社団法人日本皮膚科学会
一般的な受験対策では「過去問を周回せよ」で終わることが多いですが、実際の合否を左右する「取りこぼしやすい弱点分野」が存在します。2025年度の解答を分析すると、以下の分野で得点差が生まれやすいことが見えてきます。
これが原則です。
①遺伝性皮膚疾患と遺伝カウンセリング
2025年度では色素失調症(選択30番)、RASopathy・NF1/NF2の違い(選択21番)、X連鎖性魚鱗癬のSTS遺伝子変異(選択25番)、遺伝カウンセリングの原則(選択23番)など、遺伝関連の出題が目立ちました。特に遺伝カウンセリングの問題では「血縁者への開示は被験者本人の同意を得た後に行う」という原則が問われており、常識的に見落としやすい法的・倫理的側面が含まれています。
②皮膚病理と組織染色
EVG染色(弾性線維:動静脈の鑑別)、Kossa染色(カルシウム沈着)などの染色法と、そこから導かれる疾患鑑別は毎年出題されます。2025年度選択16番(皮膚動脈炎)のようにEVG染色像から動静脈を見分ける問題は、識別指数が低い(難問)傾向があります。病理については「1冊でわかる皮膚病理」などのサブ教科書が有効です。
③制度・法規・保険医療
医薬品副作用被害救済制度(PMDA)、指定難病の申請要件(348種類、難病指定医の記載義務)、診療報酬点数(ダーモスコピー72点)などは知識の更新が必要なエリアです。「覚えていない人は全員落とす」差別化問題として機能しやすく、一度しっかり整理しておけば確実に点が取れます。
④ダーモスコピー問題
2024年度には選択31番でダーモスコピー像から診断する問題が出ており、2025年度も継続出題が予想されます。「ダーモスコピー超簡単ガイド」(田中先生著)は、元専門医試験委員会委員長が著者であるため、同書と同一写真が試験に出た事例(2018年・2021年)があります。1冊追加する価値が十分にある参考書です。
各分野で確認する際の行動は1つに絞ることが大切で、「過去問で出た疾患の遺伝子変異名を付箋でメモする」「ガイドラインの改訂日を手帳に書く」といった小さな積み重ねが、試験当日の5〜10点の差につながります。
参考リンク(合格ボーダーラインとスコア分析)。
皮膚科専門医試験の合格ボーダーラインは、全体の上8割 – デルマ侍 note