「ステロイドを避けたいなら非ステロイド外用薬は安全」と思っているなら、接触皮膚炎の発症率がステロイド外用薬の約3倍というデータがあなたの選択を見直させます。
非ステロイド外用薬(NSAIDs外用薬)は、アラキドン酸カスケードを介してプロスタグランジンの生合成を阻害し、炎症・疼痛・発赤を抑制します。ステロイドのように副腎皮質ホルモン様の全身作用がないぶん、作用の立ち上がりは比較的穏やかです。これが基本です。
医療現場で使われるNSAIDs外用薬は、大きく「皮膚疾患治療用」と「消炎鎮痛(整形外科領域)用」の2カテゴリに分かれます。この2つは成分名が似ていても適応が異なるため、混同するとインシデントにつながります。
参考)https://www.phamnote.com/2018/07/blog-post_7.html
処方せん調剤の現場でとくに注意すべき点があります。「非ステロイド=安全・刺激が少ない」という思い込みが患者への説明誤りを生みやすい。確認が条件です。
| 区分 | 代表的成分・製品名 | 主な適応 | 皮膚深部移行性 |
|---|---|---|---|
| 皮膚疾患用 | イブプロフェンピコノール(スタデルム) | 湿疹・皮膚炎・尋常性ざ瘡 | 高い |
| 皮膚疾患用 | ウフェナマート(コンベック・フエナゾール) | 湿疹・皮膚炎 | 皮膚表面寄り |
| 整形領域用 | インドメタシン(インテバン) | 関節炎・筋肉痛・腱鞘炎 | 深部移行性良好 |
| 整形領域用 | ジクロフェナクNa(ボルタレンゲル) | 関節痛・筋肉痛・打撲 | 深部移行性良好 |
整形外科・スポーツ医療でよく使われるNSAIDs外用薬はテープ・パップ・ゲル・クリームと剤形のバリエーションが豊富です。これは使えそうですね。
剤形によって適応できる部位が変わります。狭い範囲にはクリームやゲル、広い範囲や可動域が大きい部位には貼付剤という使い分けが原則です。
参考)https://www.phamnote.com/2018/07/blog-post_7.html
意外ですね。外用薬の中で最も陽性率が高かったのはNSAIDs外用薬で、ステロイド外用薬(陽性率9.3%)の約3倍以上に相当します。
参考)https://www.radionikkei.jp/maruho_hifuka/__a__/maruho_hifuka_pdf/maruho_hifuka-110901.pdf
特に感作原性が高いと報告されている成分を確認しておきましょう。
参考)https://fph.pref.fukui.lg.jp/chiikiiryo/wp-content/uploads/sites/5/2014/08/240628_mitsudo.pdf
NSAIDs外用薬を開始して1週間以内に症状が悪化・広がる場合は接触皮膚炎を疑うことが重要です。 軟膏開始後3日前後で症状が改善し始めるのが正常な経過であり、それ以降も皮疹が拡大するなら使用中止を検討します。改善したらステロイド外用薬へ変更し、最終的にワセリン系基剤で管理する流れが一般的な対処です。
参考)https://ohisama.cute.coocan.jp/andaam.htm
また、ケトプロフェン含有貼付剤(モーラステープ)は使用中のみならず「使用後4週間」も日光照射を避ける必要があります。 この「剥がした後も4週間」という期間を患者が把握していないケースが多く、光線過敏型接触皮膚炎の原因になります。痛いですね。
参考)http://www.atopy-endo.com/manual18kanbe1sesshoku.html
参考:外用薬による接触皮膚炎の原因成分とパッチテストの陽性率について詳しくまとめられた昭和大学の研究報告です。
参考:接触皮膚炎診療ガイドライン2020(日本皮膚科学会)のPDFです。NSAIDs外用薬の感作原性に関する記載があります。
NSAIDs外用薬の中でも、ケトプロフェン系貼付剤は光線過敏性接触皮膚炎のリスクが特別に高いグループです。これだけ覚えておけばOKです。
参考)http://www.atopy-endo.com/manual18kanbe1sesshoku.html
通常の接触皮膚炎であれば貼付部位に限定した皮疹が出ますが、光線過敏型が合併すると紫外線が当たった広い範囲に皮疹が波及します。 夏場に半袖で外出した患者が上肢全体に湿疹を生じて再受診するケースは、まさにこのパターンです。
参考)http://www.atopy-endo.com/manual18kanbe1sesshoku.html
患者指導で伝えるべき内容を整理します。
参考)http://www.atopy-endo.com/manual18kanbe1sesshoku.html
一方、皮膚疾患用のNSAIDs外用薬(スタデルム・コンベック等)でも光線過敏の報告はあります。頻度は貼付剤より低いですが、ゼロではないため患者説明の際に触れておくことが望ましいです。
参考)https://fph.pref.fukui.lg.jp/chiikiiryo/wp-content/uploads/sites/5/2014/08/240628_mitsudo.pdf
薬剤性の光線過敏反応が疑われる場合は、「フィンランドチェンバー法」や標準化パッチテストによる感作原の特定が診療ガイドラインでも推奨されています。
参考:ケトプロフェン貼付剤による光線過敏型接触皮膚炎の具体的な症例画像と解説が確認できます。
非ステロイド系抗炎症剤(モーラステープ)による接触皮膚炎の症例解説
「ステロイドは長く使うと怖い、だから非ステロイドで様子を見よう」という選択が実は皮膚炎を遷延させ、最終的にはより強いステロイドが必要になるケースがあります。
厳しいところですね。非ステロイド外用薬は確かにステロイドの副作用(皮膚萎縮・毛細血管拡張・ステロイド酒さなど)を回避できますが、効力がマイルドなぶん「症状をコントロールしきれない期間が長くなる」という別のリスクを生みます。
特に乳幼児のおむつ部分・顔の湿疹にNSAIDs外用薬を第一選択として使い続けると、かぶれ(接触皮膚炎)が重なって診断が複雑になります。 現在のエビデンスに基づく治療方針では、「まず適切なランクのステロイド外用薬で炎症をしっかり鎮静させ、その後ワセリン等の保湿剤でのプロアクティブ療法に移行する」ことが推奨されています。
非ステロイド外用薬の適正な位置づけは以下のとおりです。
近年承認されたジファミラスト(モイゼルト®軟膏)やタピナロフ(ブイタマー®クリーム)は、従来のNSAIDs外用薬とは異なる機序(PDE4阻害・AhR活性化)でステロイドを使わずに炎症を制御できます。 従来のNSAIDs外用薬で効果不十分だった中等度アトピー性皮膚炎の患者に対して、これらの新規非ステロイド外用薬が有効な選択肢となってきています。中等度以上のコントロールが必要なケースでは、こうした新規製剤への切り替えも検討する価値があります。
参考:アトピー性皮膚炎領域の非ステロイド外用薬(モイゼルト・ブイタマー等)の一覧と各製品の特徴が整理されています。
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