マクロゴール軟膏と吸水クリームの正しい使い分けと混合法

マクロゴール軟膏と吸水クリームの違いや混合比率(3:7)の根拠、適切な使い分けのポイントを医療従事者向けに解説。褥瘡治療で知っておくべき注意点とは?

マクロゴール軟膏と吸水クリームの使い分けと混合レシピ

滲出液が多い褥瘡にマクロゴール軟膏を単独で使うと、肉芽が陥凹して逆に悪化することがあります。


📋 この記事の3つのポイント
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マクロゴール軟膏と吸水クリームは「基剤の性質」が根本的に異なる

マクロゴール軟膏は水溶性基剤で滲出液を吸収・乾燥させる作用があり、吸水クリームは油中水型(W/O型)の乳剤性基剤で保湿機能を持ちます。この違いが使い分けと混合比率の根拠になります。

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「吸水クリーム3:マクロゴール軟膏7」混合(古田ブレンド)は上皮化促進に有効

肉芽が皮膚面まで盛り上がった後に上皮化が進まない場合に適した混合外用剤です。水分含有量が約6.9%に調整され、過湿潤でも過乾燥でもない理想的な創環境を作ります。

⚠️
マクロゴール軟膏の使い方には「落とし穴」がある

乾燥傾向の創面にマクロゴール軟膏を使用すると創傷治癒を遅延させます。また、大きな創への混合外用剤使用ではクリティカルコロナイゼーションのリスクも生じます。適応の見極めが重要です。


マクロゴール軟膏と吸水クリームの基剤の違いを正しく理解する


褥瘡や皮膚潰瘍の外用剤を選ぶ際に、「マクロゴール軟膏」と「吸水クリーム」を混同している場面は少なくありません。見た目がどちらも軟膏状であることもあり、同じカテゴリとして扱われることがありますが、この2つは基剤の性質が根本的に異なります。


マクロゴール軟膏(代表製品:ソルベース®など)は、ポリエチレングリコール400と4000を等量混合した「水溶性基剤」に分類されます。水溶性基剤の最大の特徴は、水(滲出液)を吸収すると基剤自体が溶解・流れ出ることです。滲出液を積極的に取り込むため、創面を乾燥させる方向に働きます。


つまり基剤が「乾かす側」です。


一方の吸水クリーム(ソルベース®とは別に、W/O型の乳剤性軟膏基剤として用いられるもの)は、「油中水型(W/O型)の乳剤性基剤」に分類されます。W/O型は油の中に水分を包み込んだ構造であり、補水・保湿作用が主体です。滲出液を引き出す力は弱く、むしろ適度な水分を創面に保持する側に働きます。


この違いが条件次第で治癒促進にも、逆に治癒遅延にもつながります。


項目 マクロゴール軟膏 吸水クリーム(W/O型乳剤性基剤)
基剤の種類 水溶性基剤 乳剤性基剤(W/O型)
水分への作用 吸水・乾燥 保湿・補水
主な適応 滲出液過多の創 適湿〜やや乾燥傾向の創
代表製品 ソルベース® 吸水クリーム(各社)
水で洗い流せるか 容易に可能 やや流れにくい


この表を頭に入れておくと、外用剤の選択が格段に整理されます。


参考:基剤による外用薬の分類と機能について詳しく解説されています。


外用薬(軟膏など)が褥瘡に効くメカニズムを知って効果的に使用する|アルメディアWEB


マクロゴール軟膏が適している創とNGな創の見極め方

マクロゴール軟膏は強い吸水性を持つため、使いどころを誤ると創傷治癒をかえって妨げます。適応と禁忌を正確に把握することが、処置の質を左右します。


日本皮膚科学会の「創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン(2023年版)」でも、「乾燥した創部には適さない」と明記されています。滲出液が乏しい状態にマクロゴール軟膏を使うと、創面の残存水分まで吸い取り、乾燥による壊死・治癒遅延が起こります。逆に言えば、滲出液が過多な創面にこそ力を発揮します。


適応の判断基準は「創面が湿潤かどうか」が基本です。


マクロゴール軟膏が有効な場面は、①滲出液が明らかに多い感染・炎症期の創、②浮腫を伴う下肢潰瘍で創面が過湿潤な状態、③カデックス®軟膏やユーパスタなどに含まれる基剤として吸水目的に使用する場面、などが挙げられます。


一方で注意が必要な場面としては、①創面が乾燥しているまたはやや乾燥傾向にある場合、②壊死組織除去後の肉芽形成を積極的に促したい時期(この場合はゲーベンクリームや補水性基剤のほうが適切)、③ブロメライン軟膏と組み合わせて使用する場面があります。


⚠️ ブロメライン軟膏はマクロゴールを基剤に持つため、滲出液の少ない乾燥した痂皮に単独使用しても浸軟できず、さらに創乾燥と疼痛誘発を招きます。欧米の創傷治療痛みのベストプラクティスガイドラインでは、この組み合わせに対して注意喚起がなされています。


また、ユーパスタ®コーワ軟膏やカデックス®軟膏のようにマクロゴールを基剤とする製品を壊死組織が多い時期に積極的に使用すると、壊死組織が乾燥してこびりつき、外科的デブリードマンが逆に難しくなるという落とし穴もあります。過乾燥は創傷治癒の大敵です。


創の状態 適応 推奨外用剤の方向性
滲出液が多い ✅ マクロゴール系 カデックス、ユーパスタ、マクロゴール単独
やや乾燥傾向 ❌ マクロゴール系NG ゲーベンクリーム、オルセノン(補水系)
肉芽形成中・上皮化前 △ 条件付き 吸水クリーム+マクロゴール混合(3:7)を検討
完全乾燥・壊死 ❌ 単独NG 補水系基剤が優先(ゲーベン等)


創の乾燥・湿潤を判断することが原則です。


「吸水クリーム3:マクロゴール軟膏7」混合の根拠と処方実例

「吸水クリーム3:マクロゴール軟膏7」の混合外用剤は、「古田ブレンド」とも呼ばれる、知る人ぞ知る実践的な処方です。この混合比は、ただの経験則ではなく、基剤の特性を活かした科学的な根拠があります。


マクロゴール軟膏単独では吸水力が強すぎて、肉芽が皮膚面まで盛り上がった後の上皮化段階で創面が乾燥しすぎてしまうことがあります。そこで補水・保湿特性を持つW/O型乳剤性基剤(吸水クリーム)を加えることで、水分含有量を調整します。吸水クリーム3:マクロゴール軟膏7で混合した場合の水分含有量は約6.9%となり、これが上皮化に適した「適湿だがやや乾燥傾向」の環境を作り出します。


これは使えそうです。


もともとはリフラップ®軟膏(W/O型乳剤性基剤)+テラジアパスタ(マクロゴール系基剤)の3:7混合として使われていましたが、両製品が2019〜2020年にかけて相次いで販売終了となりました。この代替品として選ばれたのが、吸水クリーム(W/O型代替基剤として)+マクロゴール軟膏(ソルベース®など)の組み合わせです。基剤の性質がほぼ同等であるため、混合後の使用感・効能ともにほとんど変わらないとされています。


  • 💊 <strong>混合比率:吸水クリーム 3 :マクロゴール軟膏 7
  • 💊 水分含有量の目安:約6.9%(適湿〜やや乾燥傾向の創環境)
  • 💊 用途:肉芽が皮膚面まで盛り上がり、上皮化を促したい段階
  • 💊 使用部位:仙骨・肛門周囲・大転子など被覆材が維持しにくい部位にも有効
  • 💊 使用方法:木ベラで混合し、ガーゼに3mm厚程度塗布して患部に当てる(1日1回)


吸水クリームに含まれるパラオキシ安息香酸メチル(パラベン系防腐剤)が弱い抗菌作用を発揮し、軽度の細菌汚染があっても一定の清浄効果が期待できる点もメリットです。ただし、ゲーベンクリームや銀含有製剤に比べると抗菌力は劣るため、感染が強く疑われる場合や非常に大きい創への適用には注意が必要です。


実際に、「吸水クリーム+ソルベース(3:7)は肉芽増殖と上皮化を促し、スキンテアの創傷にも効果的」との臨床報告も見られます(徳島大学病院、2024年)。


参考:吸水クリーム+マクロゴール軟膏の混合外用剤の実用的な処方について解説されています。


浅い褥瘡におすすめの混合軟膏|整形外科医ブログ


マクロゴール軟膏と吸水クリームを混合する際の注意点と禁忌の組み合わせ

外用剤の混合は、利便性や水分量の調整という面で大きなメリットがある一方、誤った組み合わせが薬効を著しく低下させたり、創傷治癒を妨げることがあります。現場で特に注意が必要なポイントを整理します。


まず、マクロゴール系基剤と油脂性基剤(白色ワセリン等)の混合には注意が必要です。研究データによれば、オルセノン軟膏はワセリンと混合すると吸水力が大きく減少しますが、マクロゴール軟膏と混合した場合は吸水力に変化が認められないことが示されています(厚労省報告書, 2004年)。この結果が示すように、同系統の基剤同士の混合は比較的安定していますが、油脂性と水溶性の混合は予測できない変化を招くことがあります。


厳しいところですね。


次に、ブロメライン軟膏との混合については特に慎重さが求められます。ブロメライン軟膏はポビドンヨードや銀イオンで主薬が失活するため、ユーパスタ®やゲーベンクリームとの混合は壊死組織分解効果を著しく減弱させます。混合せずに創面の部位を分けて使用するなどの工夫が必要です。


また、マクロゴール基剤を含む外用剤を処方する際に、「商品名が軟膏だからといって油脂性基剤とは限らない」という落とし穴も見逃せません。マルホの資料によると、「5-FU軟膏5%(協和)」や「ザーネ軟膏0.5%」のように、製品名に「軟膏」と付いていても実際には水中油型クリームや水性ゲルである製品が複数存在します。添付文書で基剤を確認しないまま混合処方を出すと、予期せぬ剤形変化が生じる恐れがあります。


混合外用剤に関しては4週間程度を使用期限の目安とすることも一般的です。混合品は分離や変質のリスクがあるほか、塗布のたびに雑菌が混入する可能性もあります。長期処方した混合軟膏を継続使用させることのないよう、患者・家族への説明も重要です。


  • マクロゴール + ワセリン系:吸水力低下のリスクあり(基本的には避ける)
  • ブロメライン軟膏 + ユーパスタ・ゲーベン混合:ブロメラインの壊死分解効果が減弱
  • 乾燥創面へのマクロゴール単独使用:過乾燥・治癒遅延・疼痛増強
  • 混合外用剤を長期(目安4週超)継続使用:変質・感染のリスク


参考:外用基剤の混合可否についての薬剤師向け詳細資料です。


外用基剤の混合の可否について(2011年4月)|日本薬局方厚生委員会


マクロゴール軟膏と吸水クリームを用いた褥瘡治療のフェーズ別選択フロー

褥瘡治療の現場では、外用剤の選択を「何でもゲーベンクリーム」「感染があったらユーパスタ」という経験則で対応しているケースが少なくありません。しかし実際には、褥瘡の治癒フェーズに合わせた選択が治療期間の短縮と患者QOLの向上に直結します。


マクロゴール系基剤・吸水クリーム系を含めた外用剤の選択は、TIMEの概念(T:壊死組織、I:感染/炎症、M:湿潤バランス、E:創縁異常)を軸に考えると整理しやすくなります。


フェーズ別の目安は以下の通りです。


  • 🔴 急性炎症期・壊死組織あり:補水系基剤が優先。ゲーベンクリーム(水中油型)で壊死組織を浸軟させ自己融解を促進。壊死が厚い場合は外科的デブリードマンとの併用を検討。
  • 🟡 感染期・滲出液過多:マクロゴール系吸水基剤が有効。カデックス®軟膏、ユーパスタ®コーワ軟膏などを適用。ただし壊死組織が多量に残存している場合は創面乾燥を招くため要注意。
  • 🟢 肉芽形成期・肉芽増殖中:ゲーベンクリームや補水系基剤で湿潤環境を維持。過剰肉芽が出た場合はマクロゴール系に切り替えてドライ側に調整。
  • 🔵 上皮化促進期:吸水クリーム3:マクロゴール軟膏7(古田ブレンド)が適応。過湿潤ではなく「やや乾燥」の環境が上皮化を促進する。


特に見落とされがちなのが「上皮化促進期」への移行のサインです。肉芽が皮膚の高さまで盛り上がり、創縁から徐々に白いラインが見え始めた段階では、ゲーベンクリームのような補水系基剤を継続することで過湿潤となり、上皮化が止まることがあります。この段階で吸水クリーム+マクロゴール軟膏の混合剤に切り替えることが、治癒を大きく加速させる可能性があります。


フェーズを見誤ると治癒が遅延します。


なお、高齢者の3人に1人は下肢に浮腫を持つとされています。浮腫のある下腿の創では、マクロゴール系の吸水作用が適切な湿潤環境調整に有効なことが多い一方、個人差も大きく、逆にゲーベンクリームが有効なケースもあります。経過を写真などで記録し、週単位で評価を続けることが重要です。


参考:褥瘡の外用剤選択と褥瘡予防・管理ガイドライン(第5版)の内容についての解説です。


外用薬(軟膏など)が褥瘡に効くメカニズムを知って効果的に使用する|アルメディアWEB


参考:TIMEに基づいた褥瘡外用剤の実践的な使い分けについて詳しく解説されています。


⑥まずはここから!最低限使いこなしたい外用剤4選+α!|皮膚科専門医による褥瘡・皮膚潰瘍の処置ブログ






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