肌荒れや湿疹で受診する患者に「保湿剤を使ってください」と伝えるだけでは、もはや不十分な時代になりつつあります。
乳酸菌コスメとは、ラクトバチルス属(Lactobacillus)などの乳酸菌を培養・発酵させた発酵液やライセート(菌体破砕物)を配合したスキンケア製品のことです。韓国では2010年代後半から「마이크로바이옴 코스메틱(マイクロバイオームコスメ)」として急速に普及し、2023年時点でK-Beautyカテゴリの中でも最も成長率が高いジャンルの一つとなっています。
韓国の化粧品輸出額は2023年に約85億ドルに達し、その中でもバイオテクノロジーを活用したスキンケアラインが輸出の牽引役になっているとKOTRA(大韓貿易投資振興公社)のレポートは指摘しています。つまり、韓国乳酸菌コスメは単なるトレンドではなく、製造・研究インフラに裏打ちされた産業として成立しています。
医療従事者にとって重要なのは、「乳酸菌が入っている」という漠然とした表現ではなく、配合されている乳酸菌の種類と形態の違いを理解することです。主な形態は以下の3種類です。
これが基本です。医療指導の場でこの3種類の区別ができると、患者への説明精度が大きく上がります。
韓国の乳酸菌コスメ市場を牽引するブランドは複数ありますが、医療従事者が患者から名前を挙げられる機会が多いのは以下のようなブランドです。
代表的なのがラネージュ(LANEIGE)、スルwhasoo(雪花秀)の発酵ライン、そして近年特に話題のIunik(アイウニク)とMixsoon(ミックスーン)です。中でもMixsoonの「Bean Essence(豆エッセンス)」は大豆発酵エキスとラクトバチルス発酵液を高濃度配合した製品として、SNSでの口コミが先行して広まり、皮膚科クリニックのカウンセリングで話題になるケースが増えています。
注目成分として特に研究論文数が多いのは以下の3つです。
意外ですね。ビフィズス菌は腸内フローラの文脈で語られることが多いですが、皮膚外用の観点でも研究が蓄積されています。
韓国コスメに使われる乳酸菌の菌株や製法の詳細について、科学的な文脈で整理された情報としては、韓国政府の化粧品安全評価情報を管轄する食品医薬品安全処(MFDS)のデータベースも参考になります。
韓国食品医薬品安全処(MFDS)公式サイト:化粧品成分の規制・安全性情報(英語対応)
皮膚科や美容皮膚科の現場で乳酸菌コスメについて患者から質問を受けたとき、「まあ保湿になるので悪くはないですよ」という回答では情報提供として不十分です。これは使えそうです。科学的な説明の枠組みを持っておくことが、医療従事者としての信頼性につながります。
皮膚マイクロバイオームとは、皮膚表面に常在する微生物叢(細菌・真菌・ウイルス)のことです。健常な皮膚ではスタフィロコッカス・エピデルミディス(S. epidermidis)などのコアグラーゼ陰性ブドウ球菌が優勢であり、これが黄色ブドウ球菌(S. aureus)の過剰増殖を抑制するバランスを保っています。アトピー性皮膚炎患者では、このバランスが崩れ、S. aureusが皮膚常在菌全体の90%以上を占める例も報告されています。
乳酸菌由来成分には以下のような皮膚への作用メカニズムが提唱されています。
ただし、これらのほとんどは試験管内(in vitro)または小規模臨床試験の結果であり、大規模無作為化比較試験(RCT)による確証はまだ限られています。そのため「治療薬の代替」として患者に勧めることは現時点では根拠不足であり、「既存治療の補完」という位置づけが適切です。これが原則です。
患者から「ステロイドを塗った後に乳酸菌コスメを重ねていいですか」という質問は、皮膚科・アレルギー科・小児科を問わず増えています。医療従事者として具体的な回答の根拠を持っておくことが重要です。
外用薬と化粧品の塗布順については、一般的な皮膚科学的指針として「薬剤を先、保湿剤(コスメ)を後」が基本とされています。ただし、乳酸菌コスメが発酵液を主成分とした水溶性のエッセンスである場合、化粧水的な役割を持つため、「洗顔後→乳酸菌エッセンス→外用薬(ステロイド/タクロリムス)→保湿剤(エモリエント)」という順序が議論されることもあります。
この点について、日本皮膚科学会のアトピー性皮膚炎診療ガイドライン(2021年改訂版)では「保湿剤は外用ステロイドと同時または直後に使用しても効果に大きな差はない」とされており、順序の厳密な優先度は証拠レベルとしてまだ低いことが明記されています。
日本皮膚科学会:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021年版(PDF)外用療法・保湿剤の使用に関する記載箇所が参考になります
患者への実用的な指導としては以下の点を押さえておくと有用です。
外用薬との詳細な相互作用が懸念される患者には、製品の全成分表(INCI名)を確認するよう伝えることも一つの対処です。
ここでは、検索上位の記事にはあまり取り上げられていない視点として「医療従事者自身がコスメを試すことの情報収集価値」を紹介します。
皮膚科や美容クリニック、薬局の現場で患者指導の説得力を高める方法の一つは、実際に自分が使ってみることです。これは主観的なバイアスを生むリスクも当然あるものの、「使用感・刺激の有無・重ね付けの感触」という患者目線の情報は、添付文書や論文では得られません。乳酸菌コスメは製品によって発酵臭・テクスチャ・刺激感に大きな個体差があり、患者によっては「においが気になって続けられない」というケースも珍しくないからです。
実際に問題になるのは、患者が複数の韓国コスメを並行使用しているケースです。韓国コスメは「10スキンケアステップ(10段階スキンケア)」という文化背景があり、患者が乳酸菌エッセンス・ナイアシンアミド美容液・レチノールクリームを同時に重ねていることがあります。これは刺激の相加的リスクや成分間の不活化が起こりえます。
たとえば、レチノール(レチノイン酸前駆体)は低pH環境下で不活化されやすく、乳酸菌発酵液がpH4.5前後の酸性を示す場合、同一ステップでの使用は効果を減弱させる可能性があります。また、ナイアシンアミドと高濃度のビタミンC(L-アスコルビン酸)の同時使用は過去には「黄ばみ」リスクが議論されました(現在は希釈条件下では問題ないとする見解が多数)。
患者に対して「乳酸菌コスメを使う場合は、同じタイミングで何を重ねているか教えてもらえると適切なアドバイスができます」という一言を加えるだけで、トラブルの予防につながります。
また、薬剤師の立場からは、OTC医薬品(特に尿素製剤・ヘパリン類似物質製剤)と乳酸菌コスメの使い分けについて患者が混乱しているケースも多く、「医薬部外品・化粧品・医薬品の区分」を改めて説明する機会にもなります。韓国コスメの多くは日本の薬機法上「化粧品」に分類されるため、医薬品的な効能効果の標榜はできないという法的事実も、患者に認識してもらうことが重要です。
厚生労働省:化粧品・医薬部外品の区分と規制の解説ページ。患者への法的根拠の説明に活用できます。
以上を踏まえると、医療従事者が乳酸菌コスメを患者指導に取り入れる際の実用的な姿勢は「否定も過信もしない、成分を見て判断する」という科学的中立性です。韓国発の乳酸菌コスメは研究背景のある成分を多く含む一方、エビデンスレベルには幅があります。RCTが確立されるまでの「有望な補完的アプローチ」として位置づけ、既存の治療方針を損なわない範囲で情報提供するのが、現時点では最も適切な対応といえます。
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