ODT療法を「軟膏を塗ってラップで覆うだけ」と思っているなら、患者を副腎不全に追い込む可能性があります。
ODT療法(Occlusive Dressing Technique)とは、ステロイド軟膏を患部に塗布した後、ポリエチレンフィルム(サランラップ等)で患部を覆い、絆創膏で周囲を密封して12〜24時間おく外用療法です 。単純塗布と比較して経皮吸収が大幅に促進されるため、難治性皮膚疾患や慢性皮膚病変に対して有効な選択肢とされています 。 noguchi.867(https://noguchi.867.jp/medical-gaiyo/gaiyo1/)
密封することで皮膚表面の温度と湿度が上昇し、角質層が水和・膨化します。その結果、薬剤の経皮透過性が飛躍的に高まります。これが基本メカニズムです。
正常皮膚へのステロイド単純塗布における経皮吸収率は約3〜5%ですが、ODT療法では約28%にまで上昇します 。角質を剥離した皮膚では塗布後4〜6時間で78〜90%が吸収されるというデータもあり、皮膚の状態による差は非常に大きいといえます 。 pref.kyoto(https://www.pref.kyoto.jp/yakujikaisei/documents/1169431810200.pdf)
sccj-ifscc(https://www.sccj-ifscc.com/library/glossary_detail/255)
mibyou-pharmacist(https://mibyou-pharmacist.com/2020/09/02/odt-and-drenison/)
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使用するステロイドはストロング〜ベリーストロングクラスが中心となります。つまり薬剤選択を誤ると過剰吸収が起きやすくなります。
ODT療法では経皮吸収率が上昇するため、通常の外用療法より局所・全身の副作用リスクが高まります。知っておくべき副作用は多岐にわたります。
局所副作用として最も頻度が高いのが皮膚感染症です。密封環境は温湿度が高いため、カンジダ症・白癬・細菌性毛包炎・伝染性膿痂疹などが起こりやすくなります 。実際に「ステロイドODTにより誘発された手のカンジダ症」という症例報告もあります 。感染の兆候があれば即座に中止が原則です。 webview.isho(https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1412203143)
pins.japic.or(https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00012194.pdf)
pins.japic.or(https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00012194.pdf)
sugamo-sengoku-hifu(https://sugamo-sengoku-hifu.jp/medicines/eclar.html)
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特に小児への使用は注意が必要です。体表面積に対する吸収量の比率が成人より高く、発育障害のリスクがあります 。これは見落とされがちな視点ですね。 sugamo-sengoku-hifu(https://sugamo-sengoku-hifu.jp/medicines/eclar.html)
眼瞼に使用する場合はODT相当の密封効果が生じやすく、眼圧亢進から緑内障に移行した事例も報告されています 。定期的な眼科的検査が推奨されます。 sugamo-sengoku-hifu(https://sugamo-sengoku-hifu.jp/medicines/eclar.html)
ODT療法には明確な禁忌があります。これを確認せずに実施すると、患者に重大な損害が及ぶリスクがあります。
まずびらん面への使用は禁忌です 。皮膚バリアが消失した状態でODTを行うと、吸収率が78〜90%に跳ね上がり、全身性副作用の危険性が著しく高まります 。また細菌・真菌感染を伴う皮膚病変への使用も原則禁忌であり、適切な抗真菌薬・抗菌薬を先行使用してから再検討するのが基本です 。 pref.kyoto(https://www.pref.kyoto.jp/yakujikaisei/documents/1169431810200.pdf)
| 項目 | チェック内容 | 理由 |
|---|---|---|
| 皮膚の状態 | びらん・潰瘍がないか | 吸収率が最大90%に上昇 |
| 感染の有無 | 真菌・細菌感染が活動的でないか | 密封環境が感染を増悪 |
| 使用部位 | 眼周囲・顔面でないか | 緑内障・皮膚萎縮リスク |
| 患者年齢 | 小児(特に2歳未満)でないか | 発育障害・全身性副作用 |
| 使用期間 | 長期連用になっていないか | 副腎皮質機能抑制 |
ODT療法を安全に実施するには、使用前に皮膚状態・感染の有無・禁忌薬の3点が条件です。
正しい手順を踏まないと、効果が出ないどころか感染や副作用の温床になります。実施手順の標準化が重要です。
【基本的な実施手順】
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夜間のみ行う間欠療法も有効な方法です。24時間密封に耐えられない患者には、まず就寝中の数時間から始める方法を提案できます 。これは使えそうです。 mibyou-pharmacist(https://mibyou-pharmacist.com/2020/09/02/odt-and-drenison/)
患者指導では「ラップがずれていても効果は変わらない」と思い込ませないことが重要です。密封が不完全だと湿度と温度が不均一になり、効果が低下するだけでなく局所感染のリスクが上がります。
使用記録の管理は副腎抑制の早期発見にもつながります。長期になる場合は定期的な血中コルチゾール測定も検討が必要です。
参考リンク(ODT療法の正しい手順と禁忌について詳述した日本化粧品科学会のグロッサリー)。
ODT療法 occlusive dressing technique - 日本化粧品科学会
ODT療法をテープ剤(ドレニゾンテープ®等)で代用できることは意外と知られていません。この選択肢を知ることで、感染リスク管理と患者アドヒアランスを同時に改善できます。
ドレニゾンテープ®はフルドロキシコルチドを含むステロイドテープ製剤で、テープ自体がODTの原理を内蔵した設計になっています 。軟膏+フィルム密封のODTと比較して、以下の点で優れた特徴があります。 sokuyaku(https://sokuyaku.jp/column/drenison_tape-erm-how-to.html)
一方で、軟膏+フィルムのODTはテープ剤が使いにくい形状(指の関節部・頭皮など)や、広範囲病変に対応しやすいという利点があります。病変の部位・範囲・患者の自己管理能力を考慮して使い分けることが現実的な対応です。
参考リンク(ドレニゾンテープとODT療法の基本・注意点について詳述)。
ODT療法(閉鎖密封法)とドレニゾン®テープについて - いなかの薬剤師
参考リンク(ステロイド外用剤の副作用・使い方の解説)。
参考リンク(丸紅医薬品:ステロイド外用剤の塗り方と密封療法の詳細)。