パスタロンクリーム販売中止の理由と代替品の選び方

パスタロンクリームが販売中止になった理由をご存じですか?薬価改定や後発品への切り替え推進が背景にある中、医療現場ではどの代替品を選ぶべきか迷う声も多く、知らないと処方に支障が出ることも。正しい情報を確認しましょう。

パスタロンクリーム販売中止の理由と代替品・対応策

パスタロンクリームは「副作用が多いから販売中止になった」と思っていませんか?実は、安全性ではなく薬価制度の構造的問題が主な原因です。


この記事のポイント3選
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販売中止の本当の理由

パスタロンクリーム10%は2020〜2022年にかけて順次販売中止。主因は後発品(ジェネリック)への切り替え推進と採算悪化。安全性・有効性の問題ではありません。

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パスタロンクリーム20%の現状

20%は2025年10月より出荷停止中。経過措置満了予定は2027年3月末。現時点では保険請求できる期間がありますが、入手困難なため代替品への切り替えが急務です。

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実際に使える代替品リスト

ウレパールクリーム10%(大塚製薬工場)、ケラチナミンコーワクリーム20%(興和)、後発品の尿素クリーム各社品など、同一成分での代替が可能です。


パスタロンクリームとは:尿素製剤の基本情報と歴史

パスタロンクリームは、佐藤製薬が製造販売していた医療用の角化性・乾燥性皮膚疾患治療剤です。有効成分は「尿素(Urea)」で、10%配合と20%配合の2種類のクリーム剤がラインナップされていました。


尿素という成分は、私たちの皮膚にもともと存在する天然保湿因子(NMF:Natural Moisturizing Factor)の一種です。外用薬として使用すると、①硬くなった角質を溶かして柔らかくする「角質溶解・剥離作用」と、②皮膚の水分保持量を高める「保湿作用」の2つの薬理効果を発揮します。


適応疾患として承認されていたのは、老人性乾皮症アトピー皮膚・進行性指掌角皮症(主婦湿疹の乾燥型)・足蹠部皸裂性皮膚炎・掌蹠角化症・毛孔性苔癬・魚鱗癬の7疾患です。つまり、かかとのガサガサや二ののブツブツ(毛孔性苔癬)、うろこ状に皮膚が乾燥する魚鱗癬まで、幅広い皮膚疾患に処方されてきた薬剤です。


薬価は1g当たり4.20円(20%製剤の場合)で、25g×10本のセットで1,050〜1,075円程度の包装薬価でした。これは後発品の尿素クリーム20%「SUN」(3.3円/g)や「日医工」(約1.86円/g)と比べると、やや高めの水準に設定されていました。


皮膚科領域において長年処方され続けてきた実績のある薬剤であり、多くの患者が継続使用していたため、販売中止の報告は現場に大きな影響を与えました。製品名が変わる経緯も含め、最初に整理しておくことが重要です。


日本製薬工業協会「くすりのしおり」 – パスタロンクリーム10%の患者向け添付文書(効能・効果・副作用の詳細)


パスタロンクリーム販売中止の理由:段階的中止の経緯と薬価制度の背景

販売中止は一度に起きたわけではなく、段階的に進行しました。まずその流れを整理しましょう。


品目 対象包装 販売中止・出荷停止の時期
パスタロンクリーム10%(20g×50) 大包装 2020年9月 一部包装中止
パスタロンクリーム10%(全規格) 全包装 2022年10月 完全販売中止・経過措置満了2023年3月
パスタロンクリーム20%(全規格) 全包装 2025年10月より出荷停止中・経過措置満了予定2027年3月末


では、なぜこのような事態になったのでしょうか?


理由の核心は「医療上の需要がなくなる等の理由」による製造販売業者からの申し出です。厚生労働省の中医協資料によると、医薬品の薬価基準削除は「製造販売業者が供給の停止および薬価基準からの削除を希望する場合、関係学会の意見を踏まえて判断される」という仕組みになっています。


現場の医療従事者が見落としがちなのは、「同じ有効成分の後発品がすでに複数存在する」という点です。尿素クリームの後発品は、尿素クリーム10%「日医工」・尿素クリーム10%「SUN」・尿素クリーム20%「SUN」など複数のメーカーが製造販売しており、薬価は先発品のパスタロンクリーム20%(4.20円/g)に対して、後発品は3.3円/g程度と1g当たり約1円の差があります。


つまりは採算の問題です。国の後発品使用促進政策と定期的な薬価改定が重なる中で、先発品としての市場規模が縮小し、製造・販売コストを回収できなくなった可能性が高いといえます。副作用や品質問題は一切関係なく、純粋に「製薬会社の事業判断」として販売終了が決定されました。


これは近年の医薬品不足問題とも深く関連しています。2026年3月5日付の厚生労働省事務連絡にも「後発医薬品の供給停止や出荷調整の頻発が継続している」と明記されており、医薬品供給の構造的な課題として認識されています。


厚生労働省(令和8年3月5日)– 後発医薬品の出荷停止を踏まえた診療報酬上の臨時的取扱いについて(事務連絡)


パスタロンクリーム20%の現状:出荷停止・経過措置と選定療養の影響

パスタロンクリーム20%については、2025年10月1日より出荷停止状態が続いており、事実上の入手不能となっています。経過措置満了の予定は2027年3月末です。


この「経過措置」という仕組みを正確に理解しておく必要があります。経過措置とは、薬価基準から削除される医薬品に対して、一定期間は保険請求できる猶予期間を設けるものです。経過措置期間中は、在庫があれば保険請求は可能ですが、出荷停止中のため実質的には新たに入手することが困難な状況です。


さらに、2024年10月から始まった「長期収載品の選定療養」制度も影響しています。CloseDiの情報によると、パスタロンクリーム20%は選定療養の対象品目でした。選定療養とは、後発品への切り替えが可能にもかかわらず患者が先発品を希望する場合に、薬価差の4分の1(+消費税)を患者自己負担とする制度です。


これが何を意味するかというと、パスタロンクリームを処方し続けることで患者の金銭的負担が増加する可能性があったということです。2024年10月以降、患者から「なぜ同じ成分なのにお金が増えるの?」と問い合わせを受けた薬剤師・医師も少なくないはずです。


ただし、2026年4月の薬価改定では選定療養の対象から外れた品目が268品目あり、後発品の薬価が引き上がって先発品と逆転したケースも含まれています。パスタロンクリーム20%が出荷停止のため、こうした選定療養の計算は現実的には意味をなさない状況になっています。


重要なのは「経過措置期間が2027年3月末まである」という点です。在庫が残っている施設では引き続き保険請求できますが、2027年4月以降は完全に削除となります。今から代替品への処方切り替えを進めることが、患者への影響を最小限に抑える上で最善の対応です。


データインデックス株式会社 – 2026年3月5日付 経過措置医薬品告示情報(経過措置期限2027年3月31日の品目一覧)


パスタロンクリームの代替品:同成分・同効薬の選び方と注意点

では、実際に何を処方すれば良いのでしょうか?代替品の選択肢を整理します。


まず、最も重要な前提として「同一成分・同一濃度の後発品への切り替え」が基本です。


製品名 区分 濃度 薬価(1g) 販売会社
ウレパールクリーム10% 先発品 10% 3.90円 大塚製薬工場/大塚製薬
ケラチナミンコーワクリーム20% 先発品 20% 約4.03円 興和
尿素クリーム10%「日医工」 後発品 10% 2.90円 池田薬品/日医工
尿素クリーム20%「SUN」 後発品 20% 3.30円 サンファーマ
パスタロンソフト軟膏10% 先発品 10% 4.00円 佐藤製薬(継続販売中)
パスタロンソフト軟膏20% 先発品 20% 4.20円 佐藤製薬(一部包装中止)


薬剤師・皮膚科医がクリームからの代替を検討する場合、最初に確認すべきは「患者がクリーム剤型を希望しているか」という点です。クリーム剤は水中油型(O/W型)の乳剤で、軟膏に比べて「さっぱりした使用感」が特徴です。皮膚トリビアとして知られているように、パスタロンソフト軟膏(油中水型、W/O型)は「べたつくが刺激が少ない」、クリームは「塗り心地がさっぱり」という違いがあります。


これが処方変更時に見落とされがちな重要ポイントです。クリームから軟膏に変更した場合、刺激感は減るものの使用感が大きく変わるため、患者のアドヒアランスが低下するリスクがあります。できれば同剤型への切り替えを優先し、尿素クリーム20%「SUN」や、ウレパールクリーム10%への切り替えを検討しましょう。


なお、佐藤製薬の資料では、パスタロンクリーム20%の代替品として、同社の「パスタロンソフト軟膏20%」が案内されています。ただし、パスタロンソフト軟膏20%自身も一部包装が中止されているため、入手前に供給状況の確認が必要です。


KEGG MEDICUS – 尿素を有効成分とする医療用医薬品一覧(先発品・後発品の薬価比較)


医療従事者が知っておくべき独自視点:パスタロンクリーム中止が示す「先発品消滅時代」への備え

ここまでの内容を踏まえた上で、医療現場が今後本当に考えるべきことを提示します。


パスタロンクリームの販売中止は、「一つの製品が消えた」だけの話ではありません。これは今後も繰り返される構造的な問題の一例です。


厚生労働省の資料によると、令和8年(2026年)3月時点で経過措置に移行する品目は387品目に達しています。そのうちの1品目が、今回取り上げたパスタロンクリーム20%です。このような品目は今後も毎年発生し続けます。


医療従事者が特に注意すべき数字があります。後発品への切り替え率が50%を超えると、先発品は「選定療養」の対象となり、患者に追加負担が発生します。そして多くの場合、選定療養の対象となった先発品はいずれ販売中止の候補に上がります。処方している薬が「選定療養対象品目」になった時点で、中止を予測して代替品への移行準備を始めることが現実的な対応です。


また、意外と盲点になっているのが「後発品にも供給不安が起きている」という現実です。2020年代に入り、小林化工・日医工などの後発品メーカーで製造不正が発覚し、医薬品不足が社会問題化しました。たとえ後発品に切り替えたとしても、そのメーカーで出荷調整が起きれば再び困窮する可能性があります。


つまり「複数の後発品メーカーの選択肢を持っておく」ことが重要です。尿素クリーム20%であれば、サンファーマ製とそれ以外のメーカー製の両方を備えておくことで、片方が出荷調整になっても切り替えられるリスク分散が可能です。


現場の薬剤師・処方医がとるべき具体的なアクションとしては、CloseDiなどの医薬品供給状況データベースを定期的に確認し、自院・自薬局で使用頻度の高い品目の供給状況を把握しておくことが挙げられます。データは厚生労働省の更新から1時間以内に反映されるサービスもあり、リアルタイムで確認できます。


CloseDi – 医療用医薬品の供給状況・出荷調整データベース(厚生労働省データに基づくリアルタイム情報)