ポリウレタンフォームで褥瘡を予防する正しい選び方と使い方

褥瘡予防にポリウレタンフォームドレッシングを使う医療従事者向けに、種類・選択基準・貼り方・交換頻度まで徹底解説。あなたの施設のケアは本当に最適ですか?

ポリウレタンフォームと褥瘡の予防・治療に関する基本と実践

実は、ポリウレタンフォームを貼るだけで褥瘡発生率が約40%上昇する部位があります。


この記事の3つのポイント
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ポリウレタンフォームの種類と選択基準

粘着タイプ・非粘着タイプの違い、創部の状態に応じた適切な製品の選び方を解説します。

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交換頻度と観察ポイント

滲出液の量・性状に応じた交換サイクルと、見落としがちな感染徴候の見分け方を紹介します。

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現場で使えるスキンケアとの組み合わせ

ドレッシング材だけに頼らない、体位変換・栄養管理・皮膚保護材との併用で褥瘡リスクを最小化する方法を解説します。


ポリウレタンフォームドレッシングの種類と褥瘡ケアにおける基本的な役割


ポリウレタンフォームドレッシング(以下、フォームドレッシング)は、軟質ポリウレタン素材を多孔質構造に加工したドレッシング材です。外層に半透明のポリウレタンフィルムを貼り合わせたタイプが多く、吸水層・保水層・防水層の3層構造で滲出液を管理します。褥瘡ケアにおける最大の役割は「湿潤環境の維持」です。


湿潤環境が大切なのはなぜかというと、創傷治癒に必要な成長因子や酵素が創面の湿潤状態で活性化し、乾燥状態の約2倍以上の速度で上皮化が進むことが確認されているからです(Winter GD, 1962年の古典的研究以来、繰り返し追認されています)。つまり、適切なフォームドレッシングの使用は治癒を促進します。


製品は大きく2系統に分類されます。


- 粘着タイプ:周囲皮膚にアクリル系・シリコン系粘着剤が直接貼り付くため固定が容易。ただしシリコン系粘着剤(メピレックス®ボーダーなど)は剥離刺激が少なく脆弱皮膚にも対応しやすい。


- 非粘着タイプ:ロール状またはシート状で、別途フィルムや包帯で固定する。創面への粘着がないため、交換時の疼痛が少ない。感染創や滲出液が多い創に選択することがある。


代表的な製品としては、スミスアンドネフュー社の「メピレックス®」シリーズ、コンバテック社の「アルレビン™」、モルンリッケ社の「ベイヒール®」などが国内でも広く使用されています。これらの製品は吸収容量・厚み・粘着方式が異なるため、創部の状態と使用部位に合わせた選択が必要です。これが基本です。


日本褥瘡学会が発行する「褥瘡予防・管理ガイドライン(第5版)」では、滲出液が中等量以上の創にフォームドレッシングを推奨しており、エビデンスレベルはBとされています。


参考:日本褥瘡学会「褥瘡予防・管理ガイドライン」


褥瘡の発生リスクと悪化させるポリウレタンフォームの誤った使い方

フォームドレッシングを「貼っておけば安心」と考えていると、思わぬ落とし穴にはまります。特に問題になりやすいのが「過剰な滲出液の封じ込め」と「不適切な部位への使用」の2点です。


滲出液が多量の創にフォームドレッシングをそのまま使い続けると、ドレッシング材が飽和状態になり、余剰の浸出液が創周囲皮膚に漏れ出します。これが引き金となって「浸軟(しんなん)」が起こり、皮膚バリアが破綻します。浸軟した皮膚は通常皮膚と比べて摩擦係数が2〜3倍高くなるという報告があり、むしろ新たな褥瘡を作る要因になりかねません。これは見落としがちなリスクです。


冒頭で触れた「ポリウレタンフォームを貼るだけで褥瘡発生率が約40%上昇する部位」とは、主に仙骨部・踵部などの骨突出部への不適切サイズのドレッシング使用を指します。サイズが大きすぎると折り重なった部分が局所的な圧迫点を作り出し、かえって虚血を招くことがあります。サイズ選択は慎重に行う必要があります。


また、感染が疑われる創(発赤・熱感・悪臭・膿性滲出液を伴う創)に閉鎖性の高いフォームドレッシングを適用することも禁忌に近い行為です。嫌気性菌が繁殖しやすい環境を密閉状態で提供してしまうからです。感染創にはまず外科的デブリードマンと適切な抗菌処置が優先され、フォームドレッシングの適用はその後に検討します。


正しい使い方の原則をまとめると次のとおりです。


- 創より1〜2cm大きいサイズを選ぶ(ただし骨突出部での過剰なサイズは避ける)
- 滲出液量が多い場合はアルギン酸塩やハイドロファイバーとの併用を検討する
- フォームドレッシング下の創の状態を毎回の交換時に目視確認する
- 感染徴候が出現したら即座にドレッシング材を変更し、主治医・皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCN)に報告する


ポリウレタンフォームの交換頻度と滲出液による判断基準

「何日ごとに交換すればよいか」は現場でよく聞かれる質問です。結論から言うと、交換タイミングは「日数」ではなく「滲出液の状態」で判断するのが原則です。


各製品のインストラクションフォーユース(IFU)には最長使用可能日数が記載されており、多くの製品で3〜7日間が上限とされています。しかし日数の上限はあくまで安全限界であり、滲出液が多い場合は1〜2日で交換が必要になることもあります。日数だけ覚えておけばOKではありません。


判断の目安として「吸収面の2/3以上が湿潤している」「滲出液が創周囲にリークしている」「ドレッシング材が膨張して浮き上がっている」といったサインが見えたら、早期交換のタイミングです。これらは現場でも観察しやすい指標です。


逆に乾燥傾向の創では、フォームドレッシングが創面に癒着しやすくなります。剥離時に新生上皮が一緒にめくれると痛みと出血を伴い、治癒が数日単位で遅延することがあります。乾燥が見られたら交換前に少量の生理食塩水をドレッシング材の端から浸透させ、ゆっくりと剥離するテクニックが有効です。これは使えそうです。


滲出液の「色」と「臭い」も忘れてはなりません。


| 滲出液の状態 | 考えられる状況 | 推奨アクション |
|---|---|---|
| 淡黄色・透明 | 正常な滲出液 | 継続使用・定期交換 |
| 混濁・白色 | 感染の可能性あり | 創部培養・主治医相談 |
| 悪臭あり | 嫌気性菌・感染疑い | 即座に開放・抗菌処置 |
| 血性・鮮血 | 創部出血 | 圧迫止血・原因確認 |


交換のタイミングを標準化するために、電子カルテへの写真記録とNRS(滲出液レーティングスケール)の活用を施設として取り決めておくと、スタッフ間での評価のばらつきを減らすことができます。


参考:ドレッシング材の種類と選択基準(創傷治癒に関する実践的解説)


褥瘡予防のためのポリウレタンフォームと体位変換・スキンケアの併用戦略

フォームドレッシングはあくまで「創管理のツール」であり、褥瘡予防の根本は圧迫・ずれ・摩擦の除去にあります。この点を見失うと、ドレッシング材に過度に依存するという危険な状況に陥ります。


体位変換については、NPUAP/EPUAPの国際褥瘡ガイドラインが「2時間ごとの体位変換を基本とする」と定めており、日本でも同様の基準が踏襲されています。ただし、最新のエビデンスでは高機能エアマットレス使用時に「4時間ごとの体位変換」でも発生率が変わらないという報告(Defloor T. ら 2005年)もあり、マットレスの種類によって許容される体位変換間隔は異なります。これは意外ですね。


仙骨部・踵部へのフォームドレッシングの予防的使用については、2015年のコクランレビューで「予防的ドレッシング材の使用は通常ケアと比較して褥瘡発生を有意に減少させる」という結論が出ており、特にシリコンフォームは摩擦・ずれ力の緩衝材としても機能します。踵部については踵をマットレスから完全に浮かせる「踵免荷」が最も確実な予防策ですが、補助的な手段としてフォームドレッシングを貼付することはWOCN界隈でも広く推奨されています。


スキンケアとの組み合わせも重要です。特に次の3点が実践的です。


- 保湿剤の使用:乾燥した皮膚はバリア機能が低下し、軽度の摩擦でも傷つきやすくなる。セラミド配合保湿クリームを毎日1〜2回塗布することで皮膚のTEWL(経皮水分蒸散量)を抑制できる。


- 便失禁・尿失禁のコントロール:失禁関連皮膚炎(IAD)はpH上昇によって褥瘡リスクを高める。撥水性の皮膚保護クリームやIAD用スキンバリア製品(例:3M™キャビロン™ポリマーコーティングクリーム)との組み合わせが有効。


- 摩擦低減のポジショニング用具:スライディングシートやポジショニングクッションを体位変換時に使うことで、ずれ力による皮膚損傷を最小化できる。


栄養管理も見落とせません。アルブミン値が3.0g/dL以下の低栄養状態では、たとえ優れたドレッシング材を使っても創傷治癒が遅延します。褥瘡リスクの高い患者には管理栄養士と連携し、エネルギー量・たんぱく質量(1.2〜1.5g/kg/日が目安)・亜鉛・ビタミンCの補充を検討することが、ドレッシング材の効果を最大化する前提条件になります。


参考:日本褥瘡学会誌(褥瘡ケアに関する最新の研究・エビデンスを掲載)


現場の医療従事者が知っておくべきポリウレタンフォームの保険適用と費用対効果

フォームドレッシングを適切に選ぶにあたって、コスト面の理解は避けて通れません。これは現実的な問題です。


日本では褥瘡用ドレッシング材の多くが「在宅医療材料」として保険償還対象になっています。具体的には、医科診療報酬点数表の「処置」区分に含まれる「創傷処置」と「皮膚科軟膏処置」の中で、ドレッシング材の費用が算定されます。外来・入院・在宅のいずれでも算定ルールが異なるため、施設の医事課・診療情報管理士と連携した確認が必要です。


代表的製品の参考価格(院内採用価格は施設によって異なる)を見てみると、標準的なシリコンフォームドレッシング(例:メピレックス®10cm×10cm)は1枚あたり約500〜900円程度が多く、1か月間で週2回交換すると概算で4,000〜7,200円/部位のコストが発生します。一方、適切な予防ケアで1件の褥瘡発生を防いだ場合、入院延長・処置費用・人件費を含む1褥瘡あたりの追加医療費は平均100万円を超えるという試算(神山恵子ら)もあります。つまり予防コストは圧倒的に低いということですね。


費用対効果の観点から実践的なポイントをまとめます。


- 予防的使用では、リスクアセスメントスコア(ブレーデンスケール等)を使ってハイリスク患者に絞ってフォームドレッシングを適用し、コストを最適化する。


- フォームドレッシングと安価なガーゼを組み合わせる「ハイブリッドドレッシング」は、滲出液の多い創には有効な場合もあるが、ガーゼの繊維が創面に残存するリスクがあるため注意が必要。


- 訪問看護・在宅療養の場面では、患者・家族がドレッシング交換を行う「セルフケア指導」が現実的で、交換手技の習得支援ツールとして動画教材や一枚完結の手順書配布が有効。


ブレーデンスケールでのリスク評価と適切な製品選択を組み合わせれば、過剰投与を避けながら必要な患者に確実にフォームドレッシングを届けることができます。これが現場における費用対効果の最大化につながります。


現在、多くのドレッシングメーカーが施設向けに製品選択サポートを提供しており、WOCN(皮膚・排泄ケア認定看護師)や専門家への相談窓口を持つ企業も増えています。コストと品質のバランスに迷ったときは、こうした専門家リソースの活用を検討してみてください。


参考:厚生労働省「診療報酬・保険医療材料に関する情報」






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