酸化亜鉛を期待して処方し続けていた医療従事者ほど、代替品の選定で余分な時間を30分以上費やしていることをご存じですか。
佐藤製薬株式会社は、2022年4月26日にサトウザルベ軟膏10%・20%の販売中止を正式に発表しました 。在庫終了の目安は2022年11月とされており、2023年3月31日をもって薬価収載もなくなっています 。つまり2026年現在、処方薬としても市販品としても、サトウザルベのブランド名での新品入手は実質困難な状態です 。
製造中止の直接的な理由は公式発表では詳細が明かされていません。それが却って現場の混乱を招きました。業界内では「製造コストと需要のバランスの悪化」「ラインナップ整理」が主な背景として挙げられており、製品の品質や安全性に問題があったわけではない点は重要です 。
参考)https://cocos-store.jp/archives/83260
長年にわたり皮膚科を中心に使われてきただけに、特に在宅医療や褥瘡管理の現場での影響は小さくありませんでした。結論は「製品が悪かったのではなく、採算が合わなくなった」ということです。
サトウザルベ軟膏10%は「亜鉛華単軟膏」、20%は名称上は「亜鉛華軟膏」と混同されやすいですが、実際には基剤が異なる別製剤です 。亜鉛華単軟膏の基剤はサラシミツロウ・ナタネ油などの天然油脂系で、亜鉛華軟膏は流動パラフィン・白色軟膏系のワセリンベースを使用しています 。
参考)https://www.hukuroudou.jp/nankou08.html
この違いは処方箋記載上の問題に直結します。薬局が「亜鉛華軟膏20%」と記載された処方箋を受け取った場合、サトウザルベ20%(実質は亜鉛華単軟膏に近い基剤)をそのまま代替調剤しようとしても、厳密には同一製剤と見なせないケースがあります 。意外ですね。
参考)https://kusuri-yakuzaishi.com/zinc-oxide-ointment
酸化亜鉛の配合濃度も異なります。亜鉛華単軟膏はすべて酸化亜鉛10%、亜鉛華軟膏は20%が基本です 。処方時は濃度と基剤の両方を意識した記載が現場のトラブルを防ぎます。
参考)https://www.hukuroudou.jp/nankou08.html
以下に違いを整理します。
| 製剤名 | 酸化亜鉛濃度 | 基剤の種類 | 代表的な製品例 |
|---|---|---|---|
| 亜鉛華単軟膏(10%) | 10% | サラシミツロウ・ナタネ油等(天然油脂) | 亜鉛華単軟膏「ニッコー」「ヨシダ」 |
| 亜鉛華軟膏(20%) | 20% | 流動パラフィン・白色ワセリン等 | 亜鉛華軟膏「ニッコー」各社品 |
| サトウザルベ(販売終了) | 10%・20% | サラシミツロウ・ナタネ油 | 販売中止のため入手不可 |
佐藤製薬は販売中止にあたり、代替品として「亜鉛華(10%)単軟膏 ヨシダ(吉田製薬)」「亜鉛華(10%)単軟膏 ニッコー(丸石製薬/日興製薬)」などを案内しています 。これらは基剤も含めてサトウザルベに近い組成を持つ製品です。
参考)https://dokodekau-plus.com/satosalbenanko-hanbaityusi-riryu/
薬価で比較すると、亜鉛華(10%)単軟膏の10g製剤は1g換算で16〜27円程度の範囲に複数の後発品が揃っています 。これは使えそうです。保険診療のコスト管理の観点から、後発品への切り替えはむしろ有利な面もあります。
ただし、在庫の安定供給はメーカーによって差があるため、複数の後継品を把握しておくことが実務上のリスク管理になります。薬局や院内薬剤師と定期的に連携して在庫状況を確認するのが原則です。
褥瘡の湿潤管理や周囲皮膚の保護にサトウザルベを使用していた施設では、代替品への切り替えに際して「使用感の差」が患者ケアに影響する場合があります。基剤が白色ワセリンベースの亜鉛華軟膏は吸着・乾燥力がより強く、逆に乾燥気味の皮膚には過乾燥を招くリスクがあります 。
参考)https://cocos-store.jp/archives/83260
切り替えの際の確認ポイントをまとめます。
褥瘡ケアの分野では、酸化亜鉛軟膏が「滲出液の多いびらん面」に対して有効であることはDESIGN-R評価においても実績があります。代替品への切り替えであっても、使用目的と対象部位の状態評価を継続することが最重要です。切り替え後の経過観察を1〜2週間は慎重に行うのが基本です。
皮膚・排泄ケア認定看護師や皮膚科専門医と連携した上でプロトコルを更新することで、施設全体での安全な移行が可能になります。
サトウザルベの販売中止は、長年「先発品」として親しまれてきた伝統的製剤が市場から姿を消す例として象徴的です。製品名で覚えていた処方習慣が、後発品の成分名・基剤・濃度の知識なしには対応できなくなる時代が来たことを示しています。実はこれが最大の教訓です。
医療機関のフォーミュラリー(採用医薬品リスト)にはブランド名ではなく「成分名+基剤区分」で登録しておくことが、今後の類似問題への備えになります。特に外用剤は「基剤の違い=使用感・乾燥力の違い」であり、単純な成分名の一致だけで代替できないケースが存在します 。
参考)https://kusuri-yakuzaishi.com/zinc-oxide-ointment
参考として、亜鉛華軟膏・単軟膏の薬価や採用品の一覧は、各施設の薬剤部と日本病院薬剤師会の情報を定期確認することをお勧めします。
亜鉛華単軟膏20%製剤の代替調剤に関する薬剤師の実務解説(薬剤師くすりやさん)
亜鉛華軟膏20%と記載された処方箋に対してサトウザルベ20%で代替調剤しようとした際に生じた問題を詳細に解説しています。H3「代替品選定」部分の参考情報です。
亜鉛華軟膏と亜鉛華単軟膏の基剤・成分の違いまとめ(薬剤師のためのブログ)
亜鉛華単軟膏とサトウザルベの組成の相違点を詳細に比較しており、H3「医療従事者が混同しがちな違い」部分の根拠情報として参照できます。