手荒れを放置すると、院内感染の原因になってキャリアに傷がつく可能性があります。
「少し手が乾燥するだけ」と思っていた肌荒れが、じつは退職の引き金になることがあります。医療分野のアルバアレルギークリニックが示すデータによれば、医療従事者で手荒れを経験している人は<strong>81.4〜90%にのぼるとされており、看護師に限定すると85%が手に何らかの皮膚トラブルを抱えているという報告があります。これはほぼすべての看護師に該当する数字です。
なぜこれほど高い割合になるのでしょうか?理由は業務の特性にあります。看護師は1勤務あたり石けんによる手洗いを平均16.7回、アルコール擦式消毒剤の使用はそれ以上のペースで行っているというデータがあります(滋賀医科大学研究報告)。毎回の手洗いで皮脂膜が失われ、皮膚本来のバリア機能が低下していきます。
さらに問題なのが、手荒れが生じると手指衛生の遵守率まで下がることです。花王プロフェッショナルの調査では、手荒れによる痛みなどにより「手洗いを控えてしまった経験がある」と答えた看護師が3人に1人いることが明らかになっています。感染対策の観点からも深刻です。
手荒れは個人の体質の問題ではありません。組織全体で取り組むべき職業性皮膚疾患です。
参考:手荒れによる感染対策リスクと手指衛生遵守率の関係について詳しく解説されています。
参考:看護師の手荒れ実態(85%が何らかの皮膚問題を経験)についての専門的解説はこちら。
夜勤をこなしながら毎日スキンケアを頑張っているのに、肌荒れが治らない。そういった悩みを持つ医療従事者は多くいます。じつはスキンケア製品の質よりも、夜勤がもたらすホルモンバランスの乱れが根本的な原因になっているケースが少なくありません。
夜間に活動することで、体内時計の調整を担うメラトニンの分泌が乱れます。同時に、肌細胞の修復や再生に不可欠な成長ホルモンは、深い眠りの最初の90分前後に最も多く分泌される仕組みになっています。夜勤明けの昼間に寝ても、睡眠の質が低下しているため成長ホルモンが十分に分泌されず、肌のターンオーバー(細胞の生まれ変わり)が正常に機能しなくなります。
ターンオーバーの周期が乱れるとどうなるでしょうか?古い角質が肌表面に残り、毛穴が詰まりやすくなります。そこにストレスによる皮脂の過剰分泌が重なることで、ニキビ・吹き出物・ざらつきが繰り返されます。夜勤を始めてから突然肌荒れが増えたという声は、このメカニズムを反映しています。
ストレスが原因です。そう言い切れます。
看護師を対象にした調査では、夜勤中にフルメイクのまま勤務している割合が約8割に達するとの結果があります。長時間メイクをしたまま汗や病院内のほこりにさらされると、毛穴への負担が増し、さらに肌荒れが悪化するという悪循環が起きます。可能な場面ではすっぴんまたは肌負担の少いミネラルファンデーションへの切り替えが推奨されています。
参考:夜勤と肌荒れの原因・改善策について実体験の声を交えて解説されています。
肌荒れへの対応は、スキンケアアイテムを変えることから始めがちですが、実際には手洗い方法の見直しと保湿タイミングの習慣化が最も効果的な入口です。
手荒れ改善で最初に取り組むべきポイントをまとめると、以下のことが挙げられます。
それでも改善しない場合はどうなりますか?
炎症を繰り返している状態が3週間以上続く場合、または痛みや出血を伴う場合は皮膚科の受診が必要です。放置すると職業性皮膚炎として慢性化し、回復に数ヶ月かかることもあります。皮膚科では保険適用のビタミン剤・漢方薬・処方ローションなどを使った治療を受けられます。早めの受診が原則です。
また、体調不良(胃の不調・慢性疲労・睡眠障害など)と肌荒れが同時期に出ている場合は、夜勤負荷による内臓への影響も考えられるため、内科の受診も視野に入れましょう。
参考:看護師ができるハンドケアの具体的な対策や転職事例が掲載されています。
「もう今の病棟では続けられない」と感じたとき、すぐに退職を決断するのは早計です。退職の前に、手指衛生の頻度が少ない職場への異動・転職という選択肢が存在します。これは諦めではなく、看護師としてのキャリアを守る合理的な判断です。
手荒れに悩む医療従事者が選びやすい職場としては、次のような環境が知られています。
転職先を選ぶ際は「手指衛生の頻度」「夜勤の有無」「ストレス量」の3点を軸に確認することが重要です。
実際に転職に至った例として、25歳の一般病棟看護師Fさんのケースがあります。アルコール系消毒剤が肌に合わず、新卒からの3年間で手荒れが悪化し、腕にブツブツが出るほどになりました。皮膚科を受診しても改善しなかったFさんは、看護師専門の転職エージェントに相談した結果、保育園看護師として再出発することができました。症状の改善だけでなく、看護師としてのキャリアも継続できたのです。
これは使えそうですね。
なお、転職エージェントへの登録・相談は無料で利用できるサービスが多く、「まず情報収集だけ」という段階でも活用しやすいです。キャリアアドバイザーに「手荒れが理由で職場を変えたい」と伝えれば、同様の理由で転職した事例を共有してもらえることもあります。
個人がどれだけ保湿に気をつけても、職場環境そのものが手荒れを生み出し続けている限り、根本的な解決にはなりません。この点はあまり語られていませんが、重要な視点です。
山形大学医学部附属病院の研究によると、医療従事者の手荒れは「職業性皮膚疾患」として分類されており、個人の努力だけでは解決できない組織的課題であるとされています。つまり、手荒れに悩んでいる看護師が多い病棟・施設は、職場そのものが問題を抱えている可能性があります。
具体的にどのような問題があるのでしょうか?以下の構造が典型的です。
個人の問題ではないということです。
手荒れを理由とした退職を防ぎたい施設側の対応としては、以下が効果的だとされています。
働いている側から職場への働きかけとして有効なのが、「手荒れが改善しないため保湿剤の設置を相談したい」という切り口での申し入れです。感染対策の観点から正当性があるため、上司・感染対策チームへの提案として受け入れられやすい傾向があります。
厳しいところですね。しかし、声を上げなければ何も変わりません。
参考:医療現場の手荒れを「職業性皮膚疾患」として組織的に取り組む必要性を解説しています。
fORum Vol.07『ホ活』やっていますか?放置された手荒れが辿り着く先|Cardinal Health