床ずれ予防マットレス介護保険でのレンタル完全ガイド

床ずれ予防マットレスは介護保険で月800〜1,100円からレンタルできますが、要介護2未満は原則対象外など知らないと損するルールが多数あります。正しく使えていますか?

床ずれ予防マットレスと介護保険でのレンタル完全ガイド

要介護1でも、医師の意見書1枚で床ずれ予防マットレスを介護保険でレンタルできます。


📋 この記事の3つのポイント
💰
介護保険で月額800〜1,100円から使える

圧切替型エアマットレスでも1割負担なら月1,000円前後。自費レンタルと比べると約9割の費用を保険が負担します。

⚠️
原則「要介護2以上」が対象だが例外あり

要支援1・2・要介護1でも「日常的に寝返りが困難」と医師が認めれば例外給付として保険適用になります。

🛏️
マットレスの種類と選定が褥瘡予防の分かれ道

静止型と圧切替型エアマットレスは使う場面が異なります。誤った選択はかえって活動性を低下させるリスクがあります。


床ずれ予防マットレス(床ずれ防止用具)の介護保険適用条件

床ずれ防止用具は介護保険制度上の「福祉用具貸与」に含まれており、適切な手続きを踏めばレンタル費用のうち1〜3割の自己負担で利用できます。しかし、誰でも使えるわけではなく、適用には明確な条件が定められています。


原則として、床ずれ防止用具のレンタルに介護保険が適用されるのは、<strong>要介護2〜5の認定を受けている方です。要支援1・2および要介護1に認定された方(いわゆる「軽度者」)は、原則として給付対象外となっています。これは、軽度者の状態像からみて床ずれ防止用具の使用が想定しにくいと国が判断しているためです。


しかし、例外給付の制度があります。これが重要です。


軽度者であっても、「日常的に寝返りが困難な者」に該当すると認められれば、例外として介護保険での給付が認められます。この判断には主治医(かかりつけ医)による意見書の提出が必要で、ケアマネジャーがその内容をもとに保険者(市区町村)へ申請を行う流れになります。








要介護度 介護保険適用 備考
要支援1〜2 原則❌(例外あり) 医師の意見書+ケアマネ申請で例外給付が可能
要介護1 原則❌(例外あり) 同上
要介護2〜5 通常の福祉用具貸与として適用


「例外給付はあくまで特例で、簡単には通らないのでは?」と思う医療従事者も多いかもしれません。しかし実務上は、脳卒中後の片麻痺や関節拘縮など寝返りが困難な状態が医学的に証明できれば、認められるケースは少なくありません。医師の所見が鍵を握っています。


つまり、要介護度だけで「使えない」と判断しないことが原則です。


参考:厚生労働省による軽度者への福祉用具貸与に関する通知(要支援・要介護1の者に対する福祉用具貸与)
厚生労働省:要支援・要介護1の者に対する福祉用具貸与について(PDF)


床ずれ予防マットレスの種類と介護保険レンタル費用の目安

床ずれ防止用具として介護保険でレンタルできるマットレスには、大きく分けて「静止型マットレス」と「圧切替型エアマットレス」の2種類があります。どちらを選ぶかは、利用者の状態によって大きく変わります。


費用が気になるところです。









種類 月額(1割負担の目安) 自費レンタル(全額)の目安
静止型マットレス 500〜700円 約5,000〜7,000円
圧切替型エアマットレス 800〜1,100円 約8,000〜11,000円
車いすクッション 200〜400円 約2,000〜4,000円
体位変換器 100〜200円 約1,000〜2,000円


介護保険を使えば自費の約10分の1の負担で済みます。1割負担で圧切替型エアマットレスを使ったとしても、月に1,000円程度です。コーヒー1杯分程度の出費で、在宅での褥瘡リスクを大幅に下げられると考えれば、非常に合理的な選択といえます。


ただし、レンタル費用は介護保険の「区分支給限度基準額」の中に含まれます。たとえば要介護2の場合、1か月あたりの上限は19万7,050円(2024年度時点)です。訪問介護や通所リハビリなど他のサービスとの合算で上限に達している場合は、超過分が全額自己負担になる点に注意が必要です。


また、複数のマットレス候補の中から実際に試してみることも可能です。レンタルであれば、状態変化に応じて機種の交換も行いやすいという大きなメリットがあります。


参考リンク(費用・種類の詳細)。
ラクカイゴ:介護保険適用の床ずれ防止用具の種類と費用(料金表あり)


圧切替型エアマットレスと静止型の選び方:褥瘡リスクで決める基準

マットレスの選び方を間違えると、褥瘡予防の効果がまったく出ないどころか、逆効果になる場合もあります。これは覚えておけばOKです。


静止型マットレスは、ウレタンフォームやゲル素材で体圧を広く分散させるタイプです。電源が不要で動作音もなく、ある程度自力で寝返りができる方に向いています。褥瘡リスクが中等度以下で、かつ安定性を優先したい場合に選ばれることが多いです。


圧切替型エアマットレスは、内部のエアセルが交互に膨張・収縮することで、機械的に体圧のかかる部位を変えるタイプです。自力での寝返りが困難な方、寝たきり状態が続いている方に最も適しています。日本褥瘡学会の調査でも、二層式エアマットレスの使用で有意に褥瘡発生率が低いという報告があります。


選び方の基準は次のとおりです。



  • 自力で寝返りがある程度できる方→ 静止型マットレス(体圧分散+安定性重視)

  • 自力での寝返りが困難または全介助の方→ 圧切替型エアマットレス(疑似体位変換機能あり)

  • 褥瘡リスクが高い(OHスケール・ブレーデンスケールで高スコア)→ 圧切替型エアマットレス(高機能モデル)


ただし、圧切替型エアマットレスには注意点もあります。ポンプの動作音(製品によって20〜40dB程度)が就寝を妨げるケースがあります。騒音でいえば図書館の静寂が約30〜40dBとされており、深夜の静かな寝室では大きなストレスになることもあります。静音モデルの確認は必須です。


また、圧切替型を自力で動ける方に使うと、マットが常に動くために逆に活動性が低下してしまうリスクもあります。「高機能なほど良い」という考えは危険ですね。


耐荷重にも注意が必要です。エアマットには耐荷重の上限があり、体重が超えると「底付き」(マット底面に体が接触する状態)が起き、体圧分散の効果がゼロになります。体重+10kg以上の余裕があるモデルを選ぶことが条件です。


参考リンク(マットレス選定の詳細・訪問診療医視点)。
富士在宅診療所:褥瘡対策のエアマットと介護ベッドの選び方(訪問診療医が解説)


床ずれ予防マットレスを介護保険でレンタルする手続きの流れ

手続きの流れを正確に把握しておくことは、スムーズな導入と無駄な自費負担を防ぐうえで非常に重要です。以下のステップを確認してください。



  1. 🔵 要介護認定の申請・取得(市区町村の窓口または地域包括支援センターへ)

  2. 🔵 ケアマネジャー(介護支援専門員)へ相談(居宅サービスを使うならケアマネ選定が先)

  3. 🔵 ケアプランへの位置づけ(ケアマネがケアプランに床ずれ防止用具を組み込む)

  4. 🔵 福祉用具貸与事業者の選定(ケアマネが複数社の情報を提示してくれることが多い)

  5. 🔵 福祉用具専門相談員によるアセスメント(利用者の体格・状態・住環境を確認し適切な機種を提案)

  6. 🔵 契約・納品・設置調整(設置後に空気圧などの初期設定を行う)

  7. 🔵 定期モニタリング(6か月ごとに福祉用具専門相談員が訪問し使用状況を確認)


軽度者(要支援1・2・要介護1)の場合は、上記に加えて「主治医による例外給付の意見書」の取得が必要になります。意見書の様式は市区町村によって異なるため、ケアマネジャーか保険者(市区町村の介護保険担当窓口)に確認してください。


意外なことに、手続きの起点は「医師への相談」ではなく「ケアマネジャーへの相談」です。


医療従事者の立場からは、担当患者に寝返り困難などの状態変化があった場合、早めにケアマネジャーへ情報共有することが褥瘡予防への最短ルートになります。病院から在宅へ移行するタイミングで退院前カンファレンスを活用し、福祉用具の導入を事前に調整しておくと、在宅復帰後のリスクを大幅に減らすことができます。


参考リンク(軽度者例外給付の事例集)。
日本福祉用具供給協会:軽度要介護者等における福祉用具利用事例集(PDF)


在宅での褥瘡リスクと床ずれ予防マットレスだけに頼らないケア戦略

厚生労働省の研究班による調査では、在宅療養患者における褥瘡の有病率は7.2%、発生率は4.5%と報告されています。病院や介護施設(有病率2.5〜5.2%)を上回る水準です。これは深刻ですね。


在宅では24時間医療スタッフが見守ることができないため、体位変換の間隔が空きやすく、また介護者の疲弊から夜間対応が遅れることも珍しくありません。エアマットレスを導入することで夜間の体位変換間隔を延ばせる(条件次第で4時間程度まで)とされていますが、それだけで褥瘡を完全に防ぐことはできません。


褥瘡予防は多面的なアプローチが基本です。


🔹 体位変換:圧切替型エアマット使用中でも、日中は可能な範囲での体位変換を継続する。完全に省略はNG。


🔹 栄養管理:たんぱく質・亜鉛・ビタミンCは褥瘡の予防と治癒に直接関わる。食事摂取量が落ちているなら栄養補助食品の活用も検討する。


🔹 スキンケア:おむつ使用者は皮膚の蒸れ対策が必須。撥水クリームの塗布でバリア機能を保護する。シーツのしわや衣類の縫い目も見落とせない圧迫原因になる。


🔹 多職種連携:訪問看護師・ケアマネジャー・福祉用具専門相談員・医師がチームとして状態変化を共有し、マットレスの設定変更や体位変換スケジュールを定期的に見直す。


医師の立場からとくに押さえておきたいのが、訪問看護師との情報共有です。発赤や変色の写真をリアルタイムで共有してもらえる体制を作っておくことが、褥瘡の重症化を防ぐ最大のポイントになります。


また、マットレスの定期メンテナンスも見落とされがちです。レンタルの場合はメンテナンスが契約に含まれることが多いですが、日常的なチェックとして「エアセルが均等に膨らんでいるか」「ポンプの動作音に異常がないか」「カバーに汚れや破損がないか」の3点を介護者に確認してもらう習慣を伝えておくと安心です。


体重が3kg以上変化した場合は、エアマットレスの空気圧設定を見直す必要があります。設定変更は福祉用具専門相談員に依頼するか、製品マニュアルに従って行います。これは必須です。


参考リンク(在宅での褥瘡有病率データ・厚労省資料)。
厚生労働省:在宅医療に関する患者意識②(褥瘡有病率データ含む・PDF)