長年服用して問題なかった薬でも、10〜20年後に突然薬疹を起こすケースが報告されています。
薬剤性皮膚炎(薬疹)の治療で最初にすべきことは、原因薬剤の特定と中止です。ただし、「直前に飲み始めた薬が原因」とは限らない点が重要です。
これが原則です。
原因検索に用いられる検査としては、主に以下の3つがあります。
参考)パッチテスト
DLSTは偽陰性・偽陽性が一定数あるため、臨床所見と組み合わせた総合判断が必要です。 パッチテストは慶應義塾大学病院のKOMPASでも解説されているように、遅延型アレルギーの原因特定に特に有効な検査です。
慶應義塾大学病院 KOMPAS「パッチテスト」 — 遅延型アレルギーの検査方法と判定タイミングについて詳しく解説
軽症の薬剤性皮膚炎では、原因薬剤の中止だけで自然軽快することも多いです。 ただし、「軽症だから様子を見ていい」という判断は要注意です。
参考)薬疹の原因は?放っておくとどうなる?治療法について医師が解説
軽症型の主な治療は以下の通りです。
参考)https://www.nms.ac.jp/sh/jmanms/pdf/002020103.pdf
| 治療内容 | 目的 |
|---|---|
| 原因薬剤の中止 | 抗原刺激の排除(最優先) |
| ステロイド外用薬 | 皮膚炎症の局所抑制 |
| 抗ヒスタミン薬内服 | かゆみ・蕁麻疹の抑制 |
| 抗アレルギー薬内服 | アレルギー反応の緩和 |
原因薬剤を中止した後、通常1週間以内に発疹は消退します。 注意点として、中止後数日間は発疹がさらに拡大することがあるため、患者さんへの事前説明が重要です。 「薬をやめたのに悪化した」と不安になる患者への対応まで含めて、治療計画を立てることが臨床では求められます。
参考)https://www.tatebayashikoseibyoin.jp/shinryoka/%E8%96%AC%E7%96%B9-%E6%9C%AA
これは使えそうです。
また、薬剤による接触皮膚炎の場合は、原因薬剤の中止に加えて「接触アレルギーを起こさないステロイド外用薬を選択する」点が特に重要です。 炎症が強い場合は局所作用の強いクラスのステロイド外用薬を用います。 自己判断での薬剤中止は危険なケースもあるため、必ず専門医の指示のもとで進めることが前提です。
参考)https://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/02/dl/s0225-5n.pdf
厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル(薬剤性接触皮膚炎)」 — 接触アレルギー確定のためのパッチテスト実施指針と外用薬選択の考え方
重症薬疹は、致死的転帰をたどるリスクがある病態です。 代表的な重症型として、SJS(スティーブンス・ジョンソン症候群)、TEN(中毒性表皮壊死症)、DIHS(薬剤性過敏症症候群)の3つを必ず押さえておく必要があります。
参考)重症薬疹: Stevens-Johnson症候群/中毒性表皮…
それぞれの特徴を簡潔にまとめます。
参考)https://www.nms.ac.jp/sh/jmanms/pdf/002020103.pdf
DIHSは特に複雑です。
SJS/TENでは原則入院加療となり、全身性ステロイド投与を中心に、ステロイドパルス療法・大量免疫グロブリン療法(IVIG)・血漿交換療法を重症度に応じて組み合わせます。 一方でDIHSでは、ステロイドパルス療法はウイルス再活性化や免疫再構築症候群のリスクがあるため原則行わず、中等量〜高用量の内服ステロイドから慎重に開始します。
参考)https://www.jmedj.co.jp/blogs/product/product_22578
横浜市立大学病院「重症薬疹:SJS/TEN/DIHS」 — 各重症型の治療プロトコルについて詳しく解説
DIHSは、ステロイドを急に減量すると皮疹や肝機能障害が再燃しやすいという特徴があります。 これが見落とされがちな落とし穴です。
参考)重症薬疹: Stevens-Johnson症候群/中毒性表皮…
DIHSに関わるウイルス再活性化のメカニズムは以下の通りです。
参考)https://www.nms.ac.jp/sh/jmanms/pdf/002020103.pdf
つまりDIHSは減量に慎重さが条件です。
「症状が落ち着いたからすぐにステロイドを減らす」という対応が、逆に病態を複雑化させる原因になります。 薬剤性過敏症症候群診療ガイドライン2023(日本皮膚科学会)には、DIHSの診断・治療・遅発性合併症に関するエビデンスベースの推奨が示されており、現場での対応に役立ちます。
参考)https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/DIHS2023.pdf
日本皮膚科学会「薬剤性過敏症症候群診療ガイドライン2023」 — DIHSの確定診断基準・治療推奨・遅発性合併症の管理に関する最新エビデンス
薬剤性皮膚炎を発症した後の「再投与」が、最も注意すべき医療安全上のリスクです。 意外ですね。
参考)薬剤アレルギー/Q&A|一般社団法人日本アレルギー学会
一度アレルギーが成立した薬剤が再投与されると、初回よりも重症化する可能性があります。 日本アレルギー学会も「再投与で初回より重症化する恐れがある」と明示しています。 また外用薬でアレルギー性接触皮膚炎を起こした成分を含む薬剤を内服・注射すると、全身型の薬疹を引き起こすことがあり、厚生労働省のマニュアルでもこの点は強調されています。
参考)https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1a17.pdf
再投与は一生避けることが原則です。
再投与リスクを回避するための実践的な対策は次の通りです。
日本アレルギー学会「薬剤アレルギーQ&A」 — 再投与リスクと治療原則について患者・医療者向けに解説