SPF50の日焼け止めを毎日塗っても、UVA対策が不十分なら皮膚老化は止まりません。
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン(以下、Bis-Ethylhexyloxyphenol Methoxyphenyl Triazine、略称BEMT)は、トリアジン骨格を持つ有機系紫外線吸収剤です。分子量は658.8g/molと比較的大きく、皮膚への経皮吸収率が極めて低いという特徴があります。これは医療的観点から非常に重要な点です。
BMETは320〜400nmのUVA領域と290〜320nmのUVB領域の両方を吸収できる「ブロードスペクトラム型」の吸収剤として設計されています。UVAのピーク吸収波長は約360nm付近に位置しており、現行の有機系紫外線吸収剤の中でもトップクラスのUVAカバー能を誇ります。これは大事な点ですね。
特筆すべきは、光安定性の高さです。多くの有機系紫外線吸収剤は紫外線を繰り返し吸収することで分子構造が変化し、吸収能が低下する「光分解」を起こします。しかしBMETは光照射下でも分子構造が変化しにくく、長時間の使用でも紫外線防御効果が持続します。つまり塗り直し頻度の観点でも安定した成分です。
また、BMETはアボベンゾン(パルソール1789)との相性が良く、アボベンゾンの光安定化剤として配合されることも多いです。アボベンゾン単独では光照射で急速に分解しますが、BMETを2〜3%共配合することでその安定性が大幅に向上するという研究データがあります。
EUではTinosorb Sという商品名でChemipharma社が開発し、EU化粧品規則(EC No 1223/2009)にてAnnex VI(紫外線吸収剤リスト)に最大濃度10%で承認されています。日本でも旧厚生省(現厚生労働省)が承認し、現在は医薬部外品の日焼け止めに配合可能な成分として薬事法(現薬機法)のリストに収載されています。
医療従事者が患者指導を行う上で、成分の安全性データを正確に把握することは欠かせません。これが基本です。
BMETの安全性に関しては、複数の独立した機関による評価が行われています。EU科学委員会(SCCS:Scientific Committee on Consumer Safety)は2022年の改訂評価でも、10%以下の配合濃度においてBMETは健常成人・小児ともに安全であると結論づけています。特に経皮吸収に関するin vitro試験では、吸収率は塗布量の0.3%未満とされており、全身性の毒性リスクは事実上無視できるレベルです。
接触アレルギーのリスクについては、光接触皮膚炎(photocontact dermatitis)および接触皮膚炎の報告件数はどちらも極めてまれで、2010年代以降の欧州多施設パッチテスト研究(ESSCA、Europeanサーベイランス)においても有意な感作率は認められていません。光線過敏症患者に対しても、担当医との連携のもとで使用可能と考えられています。
内分泌かく乱(ホルモン様作用)の懸念については、ベンゾフェノン系やホモサレート系の吸収剤で問題となったエストロゲン様活性はBMETでは認められていません。意外ですね。複数のin vitro受容体結合アッセイおよびin vivo子宮増殖試験においても陰性であることが確認されています。
環境毒性の観点でも、BMETは水生生物への毒性が低く、EUの環境リスク評価でも懸念レベルに達していないとされています。オキシベンゾン(ベンゾフェノン-3)が珊瑚礁へのダメージが指摘されてハワイ州などで規制されたのとは対照的です。医療機関での患者向けリーフレットにBMETの環境安全性を盛り込む根拠として使えます。
参考:EU SCCSによるBMET安全性評価原文(英語)
EU SCCS – Opinion on Bis-Ethylhexyloxyphenol Methoxyphenyl Triazine
日焼け止め製品を選ぶ際、SPFやPA値だけを確認している医療従事者は少なくありません。しかし成分表示の読み方まで把握していると、患者への指導の質が大きく変わります。これは使えそうです。
成分表示においてBMETは「ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン」と全成分表示に記載されます。INCI名(International Nomenclature of Cosmetic Ingredients)では「Bis-Ethylhexyloxyphenol Methoxyphenyl Triazine」です。日本製品とインポート製品で表記が異なることがあるため、INCI名も覚えておくと確認がスムーズです。
配合濃度は成分表示の記載順(多い順)から概算できます。全成分表示の上位に来るほど高濃度という原則があります。BMETは通常2〜10%の範囲で配合されますが、UVA防御の強化を目的とした製品では5〜7%台が多いです。UVA防御能はPA値(PPD法)で確認できますが、PA++++(PPD16以上)の製品にはBMETが高濃度で配合されているケースが多く見られます。
| PA値 | PPD値 | UVA防御レベル |
|------|-------|--------------|
| PA+ | 2〜4未満 | 軽度 |
| PA++ | 4〜8未満 | 中等度 |
| PA+++ | 8〜16未満 | 高度 |
| PA++++ | 16以上 | 非常に高度 |
光線過敏症の患者に日焼け止めを推薦する場合、UVA防御の高さは特に重要です。PA++++かつBMET配合製品を中心に候補をリストアップしておくと、外来での指導がスムーズに進みます。成分と数値の両方を確認するのが条件です。
なお、日本の薬事規制上、BMETは「医薬部外品」区分の日焼け止めに配合できる成分のひとつです。一方、処方箋医薬品の外用サンスクリーンとは区別されますので、術後やレーザー後の患者に「医療グレード」の遮光ケアを指示する際は、医薬部外品としての限界も説明することが重要です。
他の紫外線吸収剤との違いを理解することで、患者の肌状態や使用シーンに合わせた製品提案が可能になります。
まず最も広く使われているオキシベンゾン(ベンゾフェノン-3)との比較です。オキシベンゾンはUVA・UVB両方に対応しますが、経皮吸収率が高く(塗布量の1〜9%が血中移行するとの報告あり)、内分泌かく乱作用の懸念から欧米で見直しが進んでいます。BMETは経皮吸収率が0.3%未満とされ、全身曝露リスクが格段に低い点で優れています。
次にアボベンゾン(パルソール1789)との比較です。アボベンゾンはUVA-I領域(340〜400nm)の最強クラスの吸収剤ですが、光分解が速く単独使用では数時間で効力が大幅低下します。BMETと組み合わせることでアボベンゾンの安定性が保たれるため、多くの高機能製品でBMETとアボベンゾンが共配合されています。つまり組み合わせが重要です。
酸化亜鉛・酸化チタンなどの無機系(紫外線散乱剤)との比較では、BMETは使用感(白浮きしない、肌への馴染みが良い)に優れており、患者のアドヒアランス向上に貢献します。特に褐色人種・濃い肌色の患者では白浮きが日焼け止め使用を回避する一因になることが報告されており(Journal of the American Academy of Dermatology, 2021)、有機系吸収剤を主体とした製品が受け入れられやすい場合があります。
ホモサレートとの比較では、2021年にFDAがホモサレートの吸収率の高さについて製造業者への追加安全性データ提出を求めたのに対し、BMETはFDAの評価プロセスとは別の経路(EU・日本で先行承認)を経ており、米国では現在も承認申請中という状況です。北米製品にBMETが少ない理由はここにあります。意外な背景ですね。
医療の現場で日焼け止め指導といえば「SPF30以上を塗ってください」という一言で終わるケースが多いです。しかし実際には、塗り方・量・再塗布のタイミングまで含めた包括的な指導が患者の皮膚を守る結果につながります。
まず塗布量について。多くの患者(そして医療従事者自身も)が使用量を大幅に過少にしている実態があります。日本皮膚科学会のガイドラインでも、顔全体には約1.0〜1.5mlが必要量の目安とされており、これはティースプーン1杯弱に相当します。市販の30ml容器の日焼け止めは、顔単独でも毎日使えば約20〜30日で使い切るのが適切な使用ペースです。「まだまだ残っている」という状態は塗り方が薄い可能性を示しています。
次に再塗布の指導です。BEMT配合製品の光安定性は高いですが、汗・皮脂・衣服との摩擦による物理的な除去は防げません。屋外活動時は2〜3時間ごとの再塗布が推奨されており、特に水仕事や発汗後は優先的に塗り直す必要があります。これが原則です。
術後・レーザー後・ピーリング後の患者に対しては、バリア機能が低下しているため経皮吸収の少ないBMET配合製品が適切な選択肢のひとつとなり得ます。ただし術後の処置指示に従い、創傷部への直接塗布は避け、未処置皮膚の遮光に限定することが大切です。
光線過敏型薬疹や多形性日光疹の患者では、日焼け止めと遮光衣類の併用が不可欠です。BMETの高いUVA防御能はこうした患者に特に有用ですが、製品単体への過信は禁物で、UVカットの薄手アウターや帽子との組み合わせを具体的に提案することが患者の治療アドヒアランス向上に直結します。
皮膚科・形成外科・美容医療に従事する医療者が患者に製品を推薦する場合、「BEMT配合・PA++++・ウォータープルーフ非配合(敏感肌向け)」という条件を事前に整理しておくと外来での説明が短縮できます。患者が自分でドラッグストアで選べるよう、成分名の確認方法をA4一枚の指導用紙にまとめておくという実践的なアプローチも効果的です。
日本皮膚科学会による日焼け止めの使用指針(皮膚外用薬適正使用情報)についてはこちらが参考になります。

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