実は、ジェネリックに切り替えれば安心と思っていると、患者対応が3倍以上こじれるケースがあります。
ニゾラールローション2%の出荷調整は、2024年12月3日に岩城製薬株式会社が「他社製品の限定出荷の影響による急激な需要増加」を理由として限定出荷を開始したことに始まります。 2022年4月にヤンセン社から岩城製薬へ製造販売承認が承継された経緯があり、供給体制の安定化が進む前にこの問題が発生しました。 iwakiseiyaku.co(https://www.iwakiseiyaku.co.jp/dcms_media/other/nzlosirase20241203.pdf)
2026年4月8日時点でも岩城製薬の医療用医薬品供給情報には「限定出荷(他社品の影響)」と記載が継続しています。 つまり、解除時期は現時点でも未定です。 iwakiseiyaku.co(https://www.iwakiseiyaku.co.jp/dcms_media/other/hanyouiryoukyoukyuuichiran.pdf)
後発医薬品のケトコナゾールローション2%「JG」(日本ジェネリック)や「MYK」(前田薬品)も同様に入荷困難な状況にあり、先発・後発を問わず調達が難しいという二重苦に現場は直面しています。 ラクール薬品販売が製造・販売するケトコナゾール外用液2%「NR」に至っては、2025年1月15日をもって出荷停止(解除見込み:未定)となっています。 kusuri-yakuzaishi(https://kusuri-yakuzaishi.com/ketoconazole)
薬局調査では、ニゾラールローションが「全くない・投薬・調剤できず」という状態にある薬局が複数報告されており、出荷調整の影響は皮膚科クリニックの門前薬局に限らず、内科門前薬局でも応需困難となっているケースがあります。 pcubed(https://www.pcubed.jp/internal/20250915-4918/)
多くの医療従事者が見落としがちなのが「脂漏性皮膚炎」の適応問題です。
ニゾラールローションは1999年より臨床試験が開始され、2003年3月に「白癬、皮膚カンジダ症、癜風、脂漏性皮膚炎」の適応を取得しています。 この中で「脂漏性皮膚炎」の適応を持つ外用抗真菌薬は、ニゾラールクリームとニゾラールローションのみという点が問題の核心です。 kusuri-yakuzaishi(https://kusuri-yakuzaishi.com/ketoconazole)
他の外用抗真菌薬(マイコスポール、フロリード、エンペシドなど)は、マラセチア菌(癜風菌)に対するMIC90がニゾラールローション(MIC90:1.6)と比較してはるかに高く、マイコスポールは50、フロリードとエンペシドはそれぞれ100という数値です。 MIC90が小さいほど少量で効果を発揮する薬剤であることを考えると、ケトコナゾールの優位性は約30〜60倍の差があるということですね。 kusuri-yakuzaishi(https://kusuri-yakuzaishi.com/ketoconazole)
つまり、「代替薬に切り替えるだけ」という対応が通じない場面が存在します。 ルリコン液やアスタット外用液は癜風(マラセチア菌による感染)には適応がありますが、「脂漏性皮膚炎」という診断名での処方は認められていないため、保険請求上のリスクが生じます。 処方を切り替える際には、診断名と適応の整合性を必ず確認するのが原則です。 kusuri-yakuzaishi(https://kusuri-yakuzaishi.com/ketoconazole)
代替処方を検討する際には、患者の診断名ごとに対応が変わります。これが基本です。
| 診断名 | 代替候補 | 注意点 |
|---|---|---|
| 脂漏性皮膚炎 | ニゾラールクリーム2%(在庫確認要) | ローション剤型と異なり頭皮への使用感が変わる。患者説明が必要 |
| 癜風(マラセチア感染) | ルリコン液1%、アスタット外用液1% | 脂漏性皮膚炎名義では処方不可。診断名の確認が必須 |
| 白癬・皮膚カンジダ症 | 他の外用抗真菌薬全般(ラミシール、ルリコン等) | 適応菌種を確認すること |
| 脂漏性皮膚炎(重症例) | イトリゾールカプセル(内服) | 適応菌種にマラセチア属が含まれる。内服への切り替え検討 |
脂漏性皮膚炎の患者でニゾラールローションが入手できない場合、ニゾラールクリームへの剤形変更が最も現実的な選択肢です。 ただし、ニゾラールクリームも帝國製薬が2025年4月16日から限定出荷を実施しており、入手難の状況は変わりません。 drugshortage(https://drugshortage.jp/list-sub.php?sub=2655709N1053)
内服薬として、イトリゾールカプセルの適応菌種にはマラセチア属が含まれており、外用薬での治療が困難な重症例での使用が選択肢の一つとなります。 外用から内服への切り替えを検討する場面では、主治医・皮膚科専門医との連携を確認してから行動する流れが理想的です。 kusuri-yakuzaishi(https://kusuri-yakuzaishi.com/ketoconazole)
出荷調整時に最も現場の負担を増やすのが「患者への説明」と「薬局との情報共有の齟齬」です。厳しいところですね。
薬局調査(2025年9月実施)では、ニゾラールローションについて「投薬・調剤できず」と回答した薬局が複数確認されており、皮膚科処方箋を持って薬局を回る患者が複数の薬局をはしごする事態が起きています。 こうした患者の混乱を防ぐためには、処方箋発行前に近隣薬局の在庫状況を電話または医薬品供給情報データベースで確認することが有効です。 pcubed(https://www.pcubed.jp/internal/20250915-4918/)
医薬品供給状況の確認には、DSJP(医療用医薬品供給状況データベース)が有用です。ニゾラールローション2%の告知履歴が一覧で確認できます。
DSJP:ニゾラールローション2%の供給状況・告知履歴一覧(限定出荷の詳細確認に)
岩城製薬の最新の医療用医薬品供給情報一覧(PDF)も定期的にアップデートされており、現時点での出荷状況を確認する際に役立ちます。 iwakiseiyaku.co(https://www.iwakiseiyaku.co.jp/dcms_media/other/hanyouiryoukyoukyuuichiran.pdf)
岩城製薬:医療用医薬品供給情報一覧(2026年4月8日現在)—ニゾラールローションの最新出荷状況
患者説明のポイントとしては、「薬がないのではなく、製造上の都合で供給が制限されており、安全性の問題ではないこと」を最初に伝えることで、患者の不安を軽減できます。これは使えそうです。 また、代替薬に変更する際は、薬効・使用感・塗布回数が変わる可能性があるため、具体的な使い方の変更点を書面で渡す対応が患者満足度の維持につながります。
今回の出荷調整が長期化している最大の要因の一つは、「脂漏性皮膚炎の適応を持つ外用抗真菌薬がケトコナゾール製剤しかない」という日本の薬事環境の構造的問題です。意外ですね。
脂漏性皮膚炎は慢性疾患であり、日本の推定患者数は成人人口の約1〜3%とされています。軽症例も含めると実際の処方頻度は非常に高く、皮膚科だけでなく内科・小児科・耳鼻科でも処方されます。 需要が広範な診療科に分散しているにもかかわらず、供給源が岩城製薬(先発)と数社のGE製造元に限定されているため、どこか一社に供給問題が発生すると連鎖的に市場全体が逼迫する構造になっています。 kusuri-yakuzaishi(https://kusuri-yakuzaishi.com/ketoconazole)
国際的な視点では、ケトコナゾールシャンプー(nizoral shampoo)が脂漏性皮膚炎に広く使用されていますが、日本ではケトコナゾールのシャンプー剤型は医薬品として承認されていないため、選択肢がさらに狭まります。これは知っておくと得します。
医療従事者として今できる現実的な対応は、サプライチェーンの問題に依存しすぎない処方設計の見直しです。 具体的には、以下の3点を確認しておくことが推奨されます。
出荷調整が解除される時期は現時点では未定です。 短期的な「在庫探し」だけでなく、構造的な問題を踏まえた中長期的な処方管理の視点を持つことが、今後の安定した患者ケアにつながります。 drugshortage(https://drugshortage.jp/list-sub.php?sub=2655709Q1025)
| 治療法 | アプローチ | 特徴 |
| ------------ | --------------- | ------------------ |
| イソトレチノイン(内服) | 皮脂腺の縮小・アポトーシス誘導 | 最大80〜90%の皮脂減少、根本治療 |
| マイクロボトックス | ボツリヌス毒素による皮脂腺抑制 | 効果は3〜6ヶ月持続、繰り返し可 |
| ポテンツァ | マイクロニードルRF | 毛穴縮小+皮脂腺縮小の複合効果 |
| 外用レチノイド | 皮脂分泌の部分的抑制 | 軽症向け、副作用は比較的少ない |