保湿剤なら何でも赤ちゃんに塗っても大丈夫、と思っていると皮膚バリアを壊すリスクがあります。
ロコベース リペアクリームは、スクワランやセラミド類似成分(ジメチコン)などを主体とした保湿処方で構成されています。尿素を含まない点が赤ちゃんケアにおいて重要です。なぜなら、尿素は角質溶解作用があるため、バリア機能が未熟な乳児の皮膚には刺激になりやすいからです。
赤ちゃんの皮膚は成人と比べて角層の厚みが約30%薄く、経皮水分蒸散量(TEWL)も高い状態が続きます。つまり、外部からの保湿サポートが非常に重要です。
ロコベース リペアシリーズの主な保湿成分としては以下が挙げられます。
特にワセリン基剤を含む処方は、英国の大規模研究「BEEP試験(2020年)」においてもアトピー性皮膚炎の発症予防効果が検討されており、医療現場での注目度は高まっています。
一方、ロコベース リペアミルクはさらに水性成分の比率が高く、のびが良いため広範囲に塗布しやすい半面、油性成分の含有量はクリームタイプより少なくなります。乾燥が強い季節や、特に乾燥しやすい手背・下肢にはクリームタイプの方が適しているケースが多いです。これが基本です。
成分構成をきちんと把握した上で製品を選ぶことが、医療従事者としての適切な患者指導の第一歩です。
参考:ロコベース リペアシリーズの製品情報(第一三共ヘルスケア公式)
https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/site_locobase/
「赤ちゃんに使える」と一言で言っても、製品ライン・月齢・使用部位によって判断は異なります。意外ですね。
ロコベース リペアクリームおよびリペアミルクは、メーカー(第一三共ヘルスケア)の公式情報において「生後間もない赤ちゃんから使用できる」旨が記載されています。ただし、これはあくまで健常な皮膚を対象にした一般的な記載であり、皮膚に湿疹・炎症・びらんがある場合はかかりつけ医への受診を優先すべきです。
医療現場における使用可否の判断では、以下の3点を確認することが原則です。
特に早産児はNICU管理下で日常的なスキンケアを行うことが多く、海外のガイドライン(AAP・NICE)でもエモリエント使用の推奨が明示されています。国内でも日本皮膚科学会の「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021」では、新生児期からの保湿剤使用が発症予防に有効である可能性が示されています。
保湿剤の使用は早いほど良い、という認識が広がっていますが、製品の種類を問わず「成分の安全性確認」「皮膚状態の観察」はセットで行うことが条件です。
参考:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021(日本皮膚科学会)
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/atopic_GL2021.pdf
適切な塗布量の目安として、医療現場でよく用いられるのが「フィンガーチップユニット(FTU)」です。これは人差し指の先端から第一関節までチューブから押し出した量(約0.5g)を1FTUとし、成人の手のひら2枚分(体表面積の約2%)に相当する塗布量とする考え方です。
赤ちゃんの場合は体表面積に対する塗布部位の比率が成人よりも大きいため、FTUをそのまま当てはめることは難しいです。これは使えそうです。
乳児の部位別の目安として皮膚科臨床では次のような換算が参考にされています。
塗布頻度については、入浴後10分以内に塗ることが最も有効とされています。入浴で角層の水分量が一時的に上昇した後、急速にTEWLが増加するため、このタイミングを逃さないことが重要です。
1日2回(朝・入浴後)の塗布が標準的な推奨頻度ですが、乾燥が強い冬季(室内湿度が40%以下になる時期)には1日3回への増加を検討します。乾燥が続くと皮膚バリアが崩れ、抗原感作リスクが高まることも報告されています(「経皮感作仮説」)。
塗りすぎによるリスクも忘れてはなりません。ロコベース リペアクリームのような油性成分が多い保湿剤を過剰に塗布すると、毛穴の閉塞や接触性皮膚炎を引き起こす可能性があります。「たっぷり塗れば安心」ではなく、適量を均一に伸ばすことが原則です。
保湿剤によるアトピー性皮膚炎の発症予防については、2014年ごろから複数の大規模臨床試験が実施されています。この分野は注目度が高いです。
代表的な研究として、日本の「STOP-AD試験」があります。これは新生児期から保湿剤を毎日塗布することでアトピー性皮膚炎の発症率が有意に低下するかを検討したものです。結果としては発症予防への明確な有効性は示されませんでしたが(2023年の大規模メタアナリシスでも同様)、皮膚の保湿状態を良好に保つこと自体の重要性は変わりません。
一方、「保湿剤を使っても発症予防にはならない」という解釈は過剰です。現時点でのコンセンサスとしては「発症リスクが高い乳児に対する保湿ケアは、皮膚の炎症を軽減し、QOLを改善する可能性がある」という立場が一般的です。
医療従事者として保護者に伝える際のポイントは以下の通りです。
また、ロコベース リペアシリーズはドラッグストアで広く購入でき、価格帯も1本600〜1,200円程度と入手しやすい点が、医療機関外での継続使用を促す際のアドバンテージになります。処方保湿剤が使えない状況での代替選択肢としても現実的な提案ができます。
参考:アトピー性皮膚炎の発症予防に関する最新の総説(日本皮膚科学会)
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jjd
医療従事者は1日に何十回もアルコール手指消毒を行います。手荒れはほぼ全員が経験する職業病と言っても過言ではありません。そこで「自分のためにロコベース リペアクリームを購入し、ついでに赤ちゃんにも使える」という使い方を想定している方もいるでしょう。これは合理的に見えて、実はリスクがあります。
医療従事者の手には、勤務後に院内由来の微生物が付着している可能性があります。手洗い後であっても、チューブの口を直接指で触れる使い方は交差汚染のリスクをゼロにできません。特にMRSAやノロウイルスなどは手洗いだけでは完全に除去できない場合があるため、乳児に塗布するクリームは専用のものを用意することが望ましいです。
また、職業性接触皮膚炎を持つ医療従事者(ラテックスアレルギーや特定の消毒薬アレルギーを持つケース)は、自分の皮膚に残存するアレルゲンを乳児の皮膚に移してしまうリスクも考慮が必要です。これは意外な盲点です。
実際的な対策として、以下のような管理方法を現場で取り入れると安全です。
「同じ製品を家族で使い回す」という行動は節約につながりますが、医療的なリスクを踏まえると乳児のケアには専用品を用意することが最善です。これだけ覚えておけばOKです。
職業上のリスクを家庭に持ち込まない、という視点は医療従事者ならではの重要な観点です。ロコベース リペアシリーズを赤ちゃんのスキンケアに取り入れる際は、製品の安全性だけでなく使い方・管理方法まで含めて指導・実践することが、真に質の高いケアにつながります。
参考:職業性接触皮膚炎と医療従事者のスキンケアに関する情報(日本皮膚科学会)
https://www.dermatol.or.jp/