「サージカルステンレスは医療用だから、つけっぱなしにしても絶対に金属アレルギーにならない」は大きな誤解で、素材の中にはアレルギーの原因No.1のニッケルが約12%も入っています。
「サージカルステンレス」という名前を聞くと、多くの人が医療用の特別な素材を想像します。しかし実際には、JIS規格に「サージカルステンレス」という正式な分類は存在しません。正式名称はSUS316L(以下、316L)という鋼材の規格で、もともと医療用器具・船舶部品・工業用バルブなどに広く使われてきた素材です。アクセサリー業界が「医療用っぽい安心感」を演出するためにこの呼び名を使い始め、現在に至ります。
つまり、「サージカル」という言葉はあくまでも通称です。
316Lの化学組成は、鉄が約67.5%、クロムが約18%、ニッケルが約12%、モリブデンが約2.5%という配合です。注目すべきは「ニッケルが約12%も含まれている」という点で、ニッケルは金属アレルギーの原因として世界的に最も報告頻度が高い金属です。国民生活センターの2026年の調査でも、金属アレルギーのパッチテスト陽性率においてニッケルは毎年約24〜26%と非常に高い水準を示しています。
では、なぜ316Lが「アレルギーに強い」と言われるのでしょうか。その理由は「不動態皮膜(ふどうたいひまく)」にあります。クロムが空気中の酸素と反応して表面に薄い酸化被膜を形成し、内部のニッケルが皮膚に直接触れることを防いでくれるのです。ちょうど表面をプラスチックコーティングしたようなイメージです。
ただし、この不動態皮膜は永久ではありません。
「つけっぱなしOK」という情報は間違いではありませんが、「どんな状況でも絶対安全」ではないということが原則です。また国民生活センターの調査では、「金属アレルギー対応」を謳うネックレス60銘柄を調べた結果、40銘柄でニッケルを比較的多く含む可能性が判明し、そのうち1銘柄では欧州規格基準値の17倍ものニッケルが溶出したと報告されています。
参考リンク(国民生活センター:金属アレルギー対応とうたうネックレスの調査報告書)。
国民生活センター「金属アレルギー対応をうたうネックレス」テスト報告 2026年2月
サージカルステンレスピアスをつけっぱなしにすることには、明確なメリットがあります。まず最も大きな利点は、ピアスホールの安定性が保てることです。開けたばかりのホール(いわゆるファーストピアス期間)は、毎日ピアスを外したり付けたりすることで内壁を傷つけてしまい、かえって膿みやトラブルにつながります。この時期はつけっぱなしが基本です。
またホールが安定した後も、毎日着脱を繰り返すとキャッチの締め付けや差し込みの摩擦で微細な傷が生じます。その点、316Lは錆びにくく・変色しにくい素材なので、普通のシャワーや日常の汗程度ではほぼ劣化しません。これが原則です。
一方でデメリットもあります。
これは意外ですね。「安心だから外さない」という考えが、かえってリスクを高めてしまう場合があるということです。
特に医療従事者の場合、長時間のマスク使用・手洗い・アルコール消毒の繰り返しなど、一般の人よりも過酷な環境にさらされます。耳まわりを含めた皮膚の乾燥や炎症が起きやすい状態でつけっぱなしにしていると、ホール周辺がただれやすくなることも注意が必要です。
つけっぱなしを続けるなら、正しいホールケアが欠かせません。専門医の多くが推奨するケアはシンプルで、毎日のシャワー・入浴時にボディソープや低刺激の石けんを泡立て、ピアス部分を優しく洗い流すことです。専用の消毒液を毎日使うのはNG。消毒しすぎると正常な細菌フローラが乱れ、かえって炎症を引き起こしやすくなります。
具体的なケアの手順は以下の通りです。
ホールが臭うと感じる場合は、皮脂や古い皮膚細胞が蓄積しているサインです。週に1回はピアスを取り外して、ピアス本体を中性洗剤で軽く洗うと改善しやすくなります。これだけ覚えておけばOKです。
また、ピアスのポスト部分(耳に刺さる軸)にも汚れがたまりやすいため、定期的に確認する習慣をつけると良いでしょう。医療従事者として衛生意識が高いからこそ、耳まわりのケアも仕事と同じ基準で丁寧に行いたいところです。
参考リンク(神楽坂肌と爪のクリニック:ピアストラブル専門医によるホールケア解説)。
神楽坂肌と爪のクリニック「ピアストラブルTOP5」
「水に強い素材だから、どこでもつけっぱなしでOK」は正確ではありません。状況によって対応が変わります。
✅ 基本的につけっぱなしでOKな環境
⚠️ できれば外した方がよい環境
温泉に関しては「短時間なら大丈夫」という意見もありますが、万全を期すなら外すのが安心です。厳しいところですね。
なお、「お風呂で外す場合」は紛失リスクが伴います。小さなスタッドタイプのピアスはとくに排水溝に流れるケースが多く、毎日の着脱は現実的ではないという判断から「つけっぱなし前提」を選ぶ人も多くいます。リスクとトレードオフを理解した上で自分のライフスタイルに合った選択をすることが重要です。
医療従事者、とりわけ看護師・医師・薬剤師などが勤務中にピアスを着用できるかは、職場の就業規則によって大きく異なります。多くの病院では「業務中のアクセサリー着用禁止」が原則で、患者への引っかかりによる怪我リスク・衛生面・患者さんへの印象といった複数の理由から禁止されているケースが一般的です。
つまり勤務中は外す、が原則です。
しかしピアスホールは、何日も放置すれば閉じてしまうことがあります。特に開けてから1年以内のホールは塞がりやすいため、勤務時間中は外していても「退勤後すぐに装着する」習慣を持つことでホールの維持が可能です。この「リカバリータイム」を意識することが大切です。
また、看護師の中には「透明ピアス(樹脂ピアス)」でホールを維持しようとする人もいますが、これには注意が必要です。樹脂素材は傷がつきやすく雑菌が繁殖しやすいため、長時間の着用には向いていません。ホール維持が目的であれば、ガラス製のシークレットピアスやチタン製の極小スタッドの方が衛生的です。
素材選びのポイント
医療の現場で日々「素材と安全性」の知識を使っている医療従事者だからこそ、自分が身につけるアクセサリーの素材に対しても同じ基準で選ぶことができます。「有名ブランドだから」「安いから」という理由だけで選ぶのではなく、素材の明記があるか・購入元の信頼性はどうかを確認する習慣が、長く快適にピアスライフを楽しむための近道です。
参考リンク(サージカルステンレスと金属アレルギーの関係を詳しく解説した専門コラム)。
TOKYO DIAMOND「サージカルステンレスが金属アレルギーになりにくい、は本当か?」

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