IgE検査で陰性でも、アナフィラキシーを起こすことがあります。
即時型アレルギー(I型アレルギー)の検査には、大きく分けて血液検査と皮膚検査の2系統があります。まず全体像を把握しておくことが、適切な検査項目の選択につながります。
血液検査の代表は「総IgE(非特異的IgE)」と「特異的IgE」の2種類です。総IgEはアレルギー体質かどうかの全体的なスクリーニングに使われ、アレルゲンが何かを特定するわけではありません。一方、特異的IgEはダニ・スギ・卵白などアレルゲンごとに抗体量を測定するもので、原因物質の特定を目的とします。保険診療では1回の採血につき最大13項目まで算定でき、13項目すべてを実施した場合の保険点数は上限1,430点(3割負担で約4,290円)です。
多項目スクリーニング検査として「View39」「MAST48」などがあります。View39は1回の採血で39種類の特異的IgEを一括測定でき、保険点数の上限1,430点内で算定できます。原因が絞り込めていない段階でのスクリーニングに向いています。MAST48はView39より多い48種類を測定可能な点が特徴です。つまり多項目検査が便利ということですね。
皮膚テスト(プリックテスト・皮内テスト)は、血液が採取しにくい乳幼児や、採血結果と症状が一致しない場合に有効です。プリックテストは皮膚にアレルゲン液を置き専用針で軽く刺し、15〜20分後の膨疹径で判定します。費用は保険3割負担で約500〜800円と安価ですが、実施できる施設が限られるという現状があります。
以下に代表的な即時型アレルギー検査の種類をまとめます。
| 検査名 | 測定対象 | 保険適用 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 総IgE(非特異的IgE) | 血中IgE総量 | ✅ あり | アレルギー体質スクリーニング |
| 特異的IgE(RAST) | 個別アレルゲン(最大13項目) | ✅ あり | 原因アレルゲンの特定 |
| View39 | 39種類のアレルゲン | ✅ あり(上限1,430点) | 原因不明時のスクリーニング |
| MAST48 | 48種類のアレルゲン | ✅ あり(上限1,430点) | 幅広いスクリーニング |
| 皮膚プリックテスト(SPT) | 即時型IgE反応(皮膚反応) | ✅ あり | 血液検査補助・乳幼児 |
| 食物経口負荷試験(OFC) | 実際の症状誘発の有無 | ✅ あり(条件あり) | 確定診断・閾値確認 |
即時型アレルギーの検査は「1種類で完結させる」という考え方から離れることが大切です。臨床症状・問診・血液検査・皮膚検査を組み合わせることが原則です。
参考:日本アレルギー学会「アレルギーの手引き2025 ~患者さんに接する医療従事者のために~」
https://www.jsaweb.jp/huge/JSA_tebiki2025.pdf
「IgE検査で陰性なら安心」と判断してしまうのは、臨床上の大きなリスクになります。アレルギー症状があり、問診・臨床症状等から原因アレルゲンと疑われた症例に対し特異的IgE検査を行った結果、陰性となる例は1割程度あると報告されています(CRCグループ Q&A)。
陰性になりやすいケースには主に3つのパターンがあります。1つ目は「血中のIgE値はまだ上昇していないが、症状の発現部位にはIgE抗体が局在している」場合です。幼児では低い抗体価でも症状が出ることがあり、数値だけで判断できません。2つ目は「別のアレルゲンが原因」のケースで、例えば魚介類アレルギーと思ったところ、実際にはアニサキス特異的IgEが原因だったという報告があります。検査項目にアニサキスが含まれていないと見逃すことになります。
3つ目が「仮性アレルゲン」の関与です。鮮度の落ちたサバ・マグロ・イカ、ほうれん草・トマト・ナス・ヤマイモ、さらにワインやチョコレートに含まれるヒスタミン・アセチルコリンなどは、IgEを介さずに直接アレルギー様症状を引き起こします。これは検査では陰性になります。結果だけ見ると「問題なし」と判断しがちですね。
逆に偽陽性の問題も深刻です。食物系の特異的IgE検査では、陽性と判定された項目の50〜60%は偽陽性(実際には症状が出ない)とも言われています。IgE陽性=食物アレルギーではないということを改めて確認する必要があります。不必要な食物除去を行うと、栄養状態の悪化や、QOLの低下を招きかねません。日本アレルギー学会の手引きでも、セット検査での多くの偽陽性は「注意が必要」と明記されています。
偽陽性・偽陰性を補う方法として、アレルゲンコンポーネント検査があります。たとえばピーナッツのAra h 2という特定のタンパク成分に対するIgEを測定すると、4.0 UA/mL以上で95%陽性的中率を示すとされており、粗抽出アレルゲンよりも精度が上がります。吸入性アレルゲン(スギ・ダニなど)の場合は感度・特異度ともに80〜90%程度と比較的高い信頼性があります。
参考:CRCグループ「アレルギー症状があるのに特異IgEは陰性」Q&A解説
https://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/185.html
血液検査も皮膚プリックテストも、あくまで感作の有無を調べるものです。実際に食べた際に症状が出るかどうかを確かめるには、食物経口負荷試験(OFC:Oral Food Challenge)が必要です。確定診断が目的という点を忘れずにいることが大切です。
国立成育医療研究センターが明示しているように、「血液検査や皮膚プリックテストだけでは確定診断には至らない」のが原則です。OFCは疑われる食物を実際に病院で摂取させ、症状の有無を確認するもので、現時点で最も確実な診断法とされています。症状誘発のリスクがあるため、医療スタッフが常に近くにいる環境で行うことが必須です。
OFCのもう1つの重要な用途が「閾値の確認」です。完全除去を避け、症状が出ない量を継続的に摂取させることで免疫寛容を誘導するという治療戦略が近年主流になっています。この際、安全に摂取できる量を把握するためにもOFCが使われます。過去の報告では、完全除去よりも少量でも摂取を続けた患者のほうが予後は良いことが示されています。
OFCを実施する上で医療従事者として注意したいのが、検査前の内服薬の管理です。抗ヒスタミン薬などは結果に影響を及ぼすため、一定期間の中止が必要です。当日の朝食もできる限り控えるよう指導するのが一般的です。また検査に使用する食材の種類と量は、患者ごとに主治医と相談して個別に決定します。これは有用な情報ですね。
アナフィラキシーショックのリスクがある患者には、アドレナリン自己注射薬(エピペン®)の処方と携帯指導が重要です。エピペン®は0.15mgと0.3mgの2種類があり、体重に応じて選択します。使用後は必ず医療機関を受診させるよう指導します。
参考:国立成育医療研究センター「食物アレルギー」(検査・診断・治療方針の詳細)
https://www.ncchd.go.jp/hospital/sickness/children/allergy/food_allergy.html
検査項目を正確に把握しているだけでは不十分で、算定ルールも含めて理解しておくことが医療従事者には求められます。保険算定のルールが実臨床に影響します。
特異的IgE(半定量・定量)の保険点数は1項目あたり110点です。1回の採血から複数のアレルゲンを調べる場合、特異抗原の種類ごとに点数を積み上げますが、1回に採取した血液で検査を行う場合は上限1,430点という制限があります。3割負担で約4,290円、1割負担では約1,430円が患者の自己負担の目安です。
View39などの多項目パネル検査は、この1,430点上限の中で39項目分の特異的IgEを測定できる仕組みになっています。1項目ずつ選ぶよりも効率的にスクリーニングできるため、原因アレルゲンが特定できていない患者に対して広く活用されています。ただし、原因が絞り込める場合は目的を絞ったシングルアレルゲン検査のほうが過剰な検査を避けられます。
注意が必要なのが、上限13項目を超えた検査を行った場合の取り扱いです。保険算定は1,430点が上限のため、14項目以上を検査した場合の追加費用は医療機関側の負担となります。算定上限を超えた分は自費で患者に請求することも原則できないため、検査項目の設定には事前の精査が必要です。保険点数が条件です。
総IgE(非特異的IgE)と特異的IgEを同一日に両方算定する場合、食物アレルギーの確定診断前に限り同日併算定が認められています。ただし確定診断後はルールが変わるため、レセプト審査で査定されることもあります。施設の算定基準を事前に確認しておきましょう。
参考:SRL総合検査案内「特異的IgE(MAST48mix)」保険点数・算定要件
https://test-directory.srl.info/akiruno/test/detail/038820200
一般的なView39などのパネル検査には含まれていない、しかし臨床的に重要なアレルゲンが存在します。これが見落としの原因になりやすい点です。
代表的なのがアニサキスです。魚介類(サバ・イカ・タラなど)を食べた後に蕁麻疹などの即時型症状が出た場合、魚介類のIgEを調べても陰性となるケースがあります。実際の原因は魚介類そのものではなく、寄生しているアニサキスであることがあるためです。この場合、アニサキス特異的IgEを追加で検査することが重要です。通常の多項目パネルには含まれておらず、見逃しのリスクがあります。
また昆虫アレルゲンも要注意です。通年性の喘息やアレルギー性鼻炎で、ハウスダスト・ダニ・花粉がすべて陰性だった場合、ゴキブリ・ガ・ユスリカ成虫などの昆虫特異的IgEが原因だったという報告が複数存在します。昆虫のみが原因アレルゲンとなるケースは増加傾向にあり、検査項目に加える価値があります。
交差反応による見かけ上の「多重アレルギー」も重要なテーマです。例えばシラカバ・ハンノキ花粉に感作された患者が、大豆・リンゴ・モモなどを食べると口腔アレルギー症候群(OAS)を起こすことがあります。これは花粉と食物が共通のタンパク成分(Bet v 1ホモログ)を持つためです。粗抽出アレルゲンで陽性が出ても、アレルゲンコンポーネント検査(例:大豆のGly m 4)を追加することで、真の感作か交差反応かを鑑別できます。
加熱した食品では症状が出ないのに、生の状態では症状が出るというケースもあります。これは熱に弱いタンパク成分が関与しているためで、花粉-食物アレルギー症候群の特徴の1つです。患者への食事指導の際、「加熱すれば摂取可能」という判断ができるかどうかに、コンポーネント検査が役立ちます。つまりコンポーネント検査が鑑別の鍵です。
📌 医療従事者向けの参考資料として、日本小児アレルギー学会のガイドライン(食物アレルギー診療ガイドライン2021)では特異的IgE検査について以下のように記載しています。
「特異的IgE抗体検査は、検査法により測定結果や評価法が異なることに留意する。アレルゲンコンポーネント特異的IgE抗体を測定することにより、診断精度を上げることができる。」
参考:日本小児アレルギー学会「食物アレルギー診療ガイドライン2021 ダイジェスト版 第8章 診断と検査」
https://www.jspaci.jp/guide2021/jgfa2021_8.html

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