テルビナフィンクリーム出荷調整の現状と対応策

テルビナフィンクリームの出荷調整・一時出荷停止が2025年から2026年にかけて相次いでいます。医療現場への影響と代替薬の選択肢、診療報酬上の特例措置はどう活用できるのでしょうか?

テルビナフィンクリーム出荷調整の現状と医療現場の対応

出荷調整中でも後発医薬品使用体制加算が守れます。


この記事のポイント3つ
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複数メーカーが同時に出荷調整・停止

岩城製薬・沢井製薬・ヴィアトリス等が相次いで限定出荷・出荷停止を発表。代替できるメーカーと販売中止になるメーカーを正確に把握することが急務です。

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診療報酬の臨時的取扱いで加算が守られる

厚労省通知(令和8年3月5日付)により、テルビナフィン塩酸塩クリームは後発医薬品使用割合の算出対象から除外可能。令和8年9月30日まで適用されます。

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代替薬への切り替えは成分系統の確認から

ルリコナゾール(ルリコンクリーム)やケトコナゾールへの変更が選択肢になりますが、皮膚カンジダ症への適応の有無など、病態に応じた使い分けが必要です。


テルビナフィンクリーム出荷調整の現状:何が起きているのか

テルビナフィン塩酸塩クリーム1%(先発品:ラミシールクリーム1%)は、白癬水虫・たむし)や皮膚カンジダ症に広く使われるアリルアミン系抗真菌外用剤です。その後発医薬品が2025年以降、複数のメーカーで同時並行的に出荷調整・出荷停止・販売中止となっており、医療現場での混乱が続いています。


まず状況を整理しましょう。2026年4月時点での各社の状況は以下のとおりです。







































製品名 メーカー 状況(2026年4月時点)
テルビナフィン塩酸塩クリーム1%「イワキ」 岩城製薬 一時出荷停止(再開未定)
テルビナフィン塩酸塩クリーム1%「サワイ」 沢井製薬 限定出荷(自社事情・出荷量通常)
テルビナフィン塩酸塩クリーム1%「VTRS」 ヴィアトリス 販売中止(経過措置期間満了2026年3月)
テルビナフィン塩酸塩クリーム1%「NIG」 日医工 販売中止(在庫消尽後)
テルビナフィン塩酸塩クリーム1%「トーワ」 東和薬品 通常出荷(Aプラス:出荷量増加)
テルビナフィン塩酸塩クリーム1%「JG」 日本ジェネリック 限定出荷(他社品の影響・出荷量通常)


注目すべきは、東和薬品「トーワ」は2026年3月現在で「Aプラス(出荷量増加)・通常出荷」の状態にある点です。通常出荷しているメーカーが存在します。一方で、岩城製薬「イワキ」は2025年1月から限定出荷に入り、同年10月には大包装(10g×50本)が、2026年1月には小包装(10g×10本)も一時出荷停止となりました。再開のめどは「未定」とされており、事実上の長期停止状態といえます。


出荷調整の背景はメーカーごとに異なります。岩城製薬は「需要に応えるだけの生産数量確保の目途が立たない」という生産ライン上の問題、日医工(NIG)は「品質管理体制と製造ラインの適正化の観点から継続製造が困難」、ヴィアトリスは「安定供給体制の構築と生産効率改善のためのポートフォリオ見直し」をそれぞれ理由として挙げています。後発医薬品業界では2021年ごろから続くGMP違反問題や業界再編の影響が、こうした供給不安の長期化につながっています。


後発医薬品全体では、2022年8月時点で全品目の約4割が出荷停止か限定出荷という状況になりました。2025年11月時点でも医薬品の通常出荷割合は86%にとどまっており(厚労省集計)、完全な回復にはまだ時間がかかることが見込まれます。


厚労省が公表する医療用医薬品供給状況報告を定期的に確認することが、情報収集の基本です。


参考:厚生労働省「医療用医薬品供給状況報告」ページ(最新の限定出荷・出荷停止品目のリストを確認できる)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kouhatu-iyaku/04_00003.html


テルビナフィンクリーム出荷調整と診療報酬の臨時的取扱い:加算への影響と特例措置

「後発医薬品の使用割合が下がると、後発医薬品使用体制加算(医科・歯科)や後発医薬品調剤体制加算(調剤)の施設基準を満たせなくなる」という不安を抱える医療機関・薬局は少なくありません。これは加算点数の減算、あるいは加算そのものが算定できなくなるリスクに直結します。


ここが重要なポイントです。厚生労働省は令和8年3月5日付で事務連絡「後発医薬品の出荷停止等を踏まえた診療報酬上の臨時的な取扱いについて」を発出しました。この通知により、テルビナフィン塩酸塩クリーム1%を含む供給不安品目は、後発医薬品使用割合(新指標)の算出対象から除外してよいとされています。


適用期間は令和8年(2026年)4月診療分から9月30日までです。令和8年6月1日以降に適用となる「地域支援・医薬品供給対応体制加算」および「地域支援・外来医薬品供給対応体制加算」の実績要件にも同様に適用されます。


ただし、1点注意が必要です。この除外取扱いを行う場合は、通知の別添2に記載された「全ての品目」について算出対象から除外することが条件となっており、特定の成分・品目だけを部分的に除外することは認められていません。


つまり、この取扱いを適用するか否かは月単位で選択でき、適用した月と適用しない月が混在していても差し支えありません。また、加算区分に変更が生じる場合は、しかるべく届出を行う必要があります。これも事務連絡に明記された点です。


この特例措置の存在を知らずに、出荷調整中の後発医薬品をなんとか確保しようと過剰注文してしまうケースが現場では見られます。それは却って供給状況を悪化させる行為にもなりかねません。加算確保のために無理な在庫確保に走ることなく、まず制度上の取扱いを確認することが先決です。


参考:厚生労働省事務連絡「後発医薬品の出荷停止等を踏まえた診療報酬上の臨時的な取扱いについて」(令和8年3月5日付。テルビナフィン塩酸塩クリームを含む除外品目リストと算定方法が記載)
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T260309S0100.pdf


テルビナフィンクリーム出荷調整時の代替薬選択:白癬・カンジダへの対応

出荷調整が長引く中、代替薬への切り替えを検討する場面は増えています。選択肢が頭に入っているだけで、処方対応のスピードが変わります。


テルビナフィン塩酸塩はアリルアミン系の抗真菌薬であり、白癬菌(皮膚糸状菌)への殺真菌作用が特に強いのが特徴です。一方でカンジダへの効果はイミダゾール系やトリアゾール系の薬剤と比べ、やや弱い傾向があります。代替薬を選ぶ際は病態と原因菌を意識することが大前提です。


主な代替外用抗真菌薬は以下のとおりです。


| 薬剤名(例) | 系統 | 白癬 | カンジダ | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| ルリコンクリーム1%(ルリコナゾール) | イミダゾール系 | ◎ | ◎ | 院内フォーミュラリで第一選択とされることもある |
| ニゾラールクリーム2%(ケトコナゾール) | イミダゾール系 | ○ | ◎ | 脂漏性皮膚炎にも有効 |
| アスタットクリーム1%(ラノコナゾール) | イミダゾール系 | ◎ | ◎ | びらん・傷がある場合は軟膏製剤を検討 |
| マイコスポールクリーム1%(ビホナゾール) | イミダゾール系 | ○ | ◎ | 1日1回塗布で対応可能 |


特にルリコナゾール(ルリコンクリーム)は、一部病院のフォーミュラリで白癬の第一選択薬として位置づけられているほど抗白癬活性が高く、代替としての有力候補です。


ただし、先発品のラミシールクリームが引き続き通常出荷されている点も見落とせません。後発品のコスト優位性にこだわらず、先発品(ラミシールクリーム1%・サンファーマ)への切り替えを検討することも、現実的な選択肢の一つになります。先発品の薬価は1gあたり18.50円、後発品は9.50円程度(沢井)と差はありますが、代替薬の系統変更よりもシンプルな対応です。


代替薬への処方変更を行った場合は、疑義照会への対応フローを薬局と事前に共有しておくことで、患者への説明もスムーズになります。


参考:DSJP(医療用医薬品供給状況データベース)では各製品の最新供給状況と代替品情報を確認できます
https://drugshortage.jp/


テルビナフィンクリーム出荷調整が長引く根本的な背景:後発医薬品業界の構造問題

「なぜ出荷調整はいつまでも解消されないのか」という疑問は、多くの医療従事者が抱いている感覚だと思います。単なる一時的な生産トラブルではないことを理解しておくと、先々の対応の見通しも変わってきます。


後発医薬品の供給不安が続く最大の背景は、業界構造の問題にあります。国内の後発医薬品メーカーは中小企業が多く、製品1品目あたりの薬価が低いため、製造設備への大規模投資やGMP(医薬品製造・品質管理の基準)への対応コストを吸収しにくい構造です。これが品質上の問題や生産ライン停止につながり、出荷調整を引き起こしています。


テルビナフィンクリームも例外ではありません。日医工(NIG)が「品質管理体制と製造ラインの適正化が困難」として販売中止を選択したのも、こうした業界の現実を反映しています。業界全体では、2022年8月時点で全医薬品の約4割が出荷停止か限定出荷という水準に達した深刻さがあります。


後発医薬品の生産能力は徐々に回復しており、業界予測では2026年度以降に供給量が需要量を上回る見通しも出てきています。ただし、テルビナフィンクリームに関しては、販売中止を選択したメーカーが複数あることから、市場の担い手自体が減少しています。需給バランスの回復には時間がかかる可能性があります。


厚生労働省は改正薬機法を段階的に施行し、製造業者への安定供給義務の強化、業界再編の促進を進めています。医療現場の立場としては、定期的に供給状況をモニタリングしながら、代替薬の調達経路を複数確保しておく体制を整えることが現実的な対策です。


参考:後発医薬品の安定供給に向けた業界動向(日経ビジネス系記事・2025年10月掲載)


テルビナフィンクリーム出荷調整の現場対応:薬剤師・医師が今すぐできること

状況の把握だけで終わらせず、今日から実践できる対応を整理しておくことが大切です。これは使えそうですね。


① 供給状況を「成分単位」で定期確認する


医薬品の供給状況は頻繁に変わります。特定のメーカー品の状況だけでなく、同一成分・同一剤形の品目全体を「成分単位」で俯瞰することが重要です。厚労省が公表する「医療用医薬品供給状況報告」のExcelリストや、DSJP(医療用医薬品供給状況データベース)を活用すると、どのメーカーが通常出荷しているかを一覧で確認できます。東和薬品「トーワ」は2026年3月現在で出荷量増加(Aプラス)の状態であり、採用が可能な場合はまず確認する価値があります。


② 診療報酬の特例措置を院内で共有する


令和8年3月5日付の厚労省事務連絡の内容は、算定担当者だけが知っていてもあまり意味がありません。処方医・薬局管理者・医事課といった関係者に横断的に周知し、「テルビナフィンクリームが入手できなかったとしても、加算の施設基準への影響は一定期間保護される」という点を共有することが、現場の不安軽減につながります。特例措置の適用期間(2026年9月30日まで)と、適用条件(全除外品目を一括除外する必要がある点)は特に注意が必要です。


③ 代替薬の処方フローを事前に整備する


日常診療の中で「テルビナフィンクリームが入荷できない」という状況は、突然やってきます。代替薬として何を使うか、疑義照会のフローをどうするか、患者への説明はどの文言で行うかを事前に医療機関と薬局で合意しておくと、実際の場面での対応が大幅にスムーズになります。院内フォーミュラリが整備されている施設では、この場面でその威力を発揮します。フォーミュラリ未整備の施設でも、抗真菌外用薬の代替薬リストを1枚のメモとして持っておくだけで対応が変わります。


④ 過剰な在庫確保を避ける


出荷調整中の医薬品は、需要が集中するメーカーに注文が殺到しやすく、これが「限定出荷」のさらなる引き金になることがあります。「とりあえず多めに注文しておく」という判断は、他の医療機関の患者さんへの供給を妨げる可能性があります。必要量のみを発注するという卸への協力姿勢が、供給安定への間接的な貢献になります。沢井製薬も2026年3月の案内文書で「従来の数量を超えるご注文はお控えください」と明記しています。過剰発注はNGです。


⑤ 供給状況の変化を患者さんにも説明する準備をする


「処方箋に書いてある薬が出せません」と説明する場面は、患者の不安を招きやすい場面です。「現在、製薬会社の都合で一時的に入手が難しい状況です。同じ効果の別のお薬に切り替えさせていただきます」というひと言の準備があるだけで、現場のコミュニケーションは格段に変わります。


参考:沢井製薬「弊社製品の供給に関するご連絡とお詫び」(2026年3月16日付。82品目の限定出荷・27品目の出荷停止状況が記載)
https://med.sawai.co.jp/file/pr27_1299_2.pdf