ステロイド外用薬で眼囲皮膚炎を治しても、すぐ再発した経験はないでしょうか。
参考)「まぶたのかゆみが治らない」とお悩みの方へ|おすすめの外用薬…
眼囲皮膚炎(periocular dermatitis)とは、眼の周囲・まぶた・眼瞼縁に生じる皮膚炎の総称です。原因によって大きく3分類されます。
| 分類 | 代表的な原因 | 第一選択薬 |
|---|---|---|
| アレルギー性接触皮膚炎 | 化粧品・目薬・シャンプーなど | ステロイド外用薬+原因物質の除去 |
| 刺激性接触皮膚炎 | 摩擦・乾燥・防腐剤 | 保湿剤+弱ステロイド |
| 感染性(細菌・ウイルス) | 黄色ブドウ球菌・単純ヘルペス | 抗菌薬軟膏・抗ウイルス薬(バラシクロビルなど) |
研究によると、眼囲皮膚炎の原因の54.2%は使用中の点眼薬そのものであることが報告されています。 感染性の疑いがある場合には、ステロイドの単独使用は症状を増悪させるリスクがあります。 原因分類なしに薬を選ぶことは避けるべきです。
患者に複数の点眼薬が処方されている場合は、相互作用だけでなく防腐剤(塩化ベンザルコニウムなど)への過敏反応も原因として積極的に疑ってください。
ステロイド外用薬は目の周囲には原則「ウィーク」〜「マイルド」クラスを使用します。 眼瞼部は顔の中でも皮膚が特に薄い部位であるため、強いクラスの外用薬は経皮吸収が高く副作用リスクが増大します。
参考)顔に使えるステロイドの市販薬はある?購入時の注意点や使い方を…
最もよく使用される眼軟膏型ステロイドはプレドニン眼軟膏(プレドニゾロン酢酸エステル)で、強度分類はウィーククラスに相当します。 眼瞼皮膚への適用を前提に設計されており、他クラスの外用薬よりも安全域が広い点が特徴です。
参考)ステロイド外用薬「プレドニン眼軟膏(プレドニゾロン酢酸エステ…
ただし重要な注意点があります。プレドニン眼軟膏の添付文書には「眼瞼皮膚への使用に際しては眼圧亢進・緑内障に注意すること」と明記されています。 つまり、眼周囲専用の軟膏であっても眼圧上昇リスクはゼロではありません。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00049651.pdf
| ステロイドクラス | 例 | 眼周囲への使用可否 |
|---|---|---|
| ストロング | ベタメタゾン吉草酸エステル | ⚠️ 顔への広範囲使用不可 |
| ミディアム | トリアムシノロンアセトニド | △ 短期・限局的のみ |
| マイルド | クロベタゾン酪酸エステル | ○ 慎重に |
| ウィーク | プレドニゾロン酢酸エステル | ○ 標準使用 |
市販薬のステロイドは、目の周囲を避けて使用するよう指示されているものが大多数です。 OTCをそのまま眼囲に使用する患者への注意指導は欠かせません。
参考)顔に使えるステロイドの市販薬はある?購入時の注意点や使い方を…
プレドニン眼軟膏添付文書(JAPIC):眼瞼皮膚使用時の眼圧亢進・緑内障リスクについて記載あり
ここが多くの医療者が見落としがちなポイントです。プロトピック軟膏(タクロリムス)は、ステロイド外用薬で繰り返す眼囲皮膚炎に対して有力な代替薬です。
参考)「まぶたのかゆみが治らない」とお悩みの方へ|おすすめの外用薬…
プロトピック軟膏はカルシニューリン阻害薬に分類され、Tリンパ球の過剰活性化を抑えることで炎症とかゆみを制御します。 その炎症抑制効果の強さは、ミディアム〜ストロングクラスのステロイド外用薬と同程度とされています。 これは見た目の「軟らかいイメージ」から想像するよりも、はるかに強力な効果です。
参考)アトピー性皮膚炎治療薬「プロトピック軟膏(タクロリムス)」 …
大きな利点は皮膚萎縮が起こらないことです。ステロイドと異なり、正常皮膚にはほとんど吸収されないため、長期使用でも皮膚が薄くなるリスクが低い。 眼囲のように元々皮膚が薄い部位こそ、プロトピックの適応が理にかなっています。
実際の切り替えの目安は以下の通りです。
参考)「まぶたのかゆみが治らない」とお悩みの方へ|おすすめの外用薬…
プロトピックへの切り替えを早く行うことが再発予防の鍵です。
日本皮膚科学会:タクロリムス軟膏の使用上の注意と血中濃度モニタリングに関する情報
ステロイド外用薬を眼囲に使用した場合、視力や視野に影響が出る可能性があります。これは見逃されやすい重大なリスクです。
眼瞼部にステロイドを長期塗布すると眼圧が上昇し、「ステロイド緑内障」を引き起こすことがあります。 緑内障は発症しても初期段階では自覚症状がほとんどなく、視野欠損が自覚された時点では既に視神経がかなり障害されているケースも少なくありません。
参考)アトピー性皮膚炎が目の周りに出来た場合、合併症に注意!出来る…
アトピー性皮膚炎で眼囲皮膚炎を繰り返す患者では、ステロイドによる続発緑内障だけでなく、目をこする行為による網膜剥離リスクも高まります。 眼科との連携が不可欠です。
モニタリングが必要な患者の目安。
緑内障とアトピー性皮膚炎の関係:ステロイドによる眼圧上昇のメカニズム解説
ここは見落としやすい独自の視点です。眼囲皮膚炎の治療中に、治療のために使っている目薬そのものが原因となっている可能性を常に考慮すべきです。
研究では、眼囲皮膚炎の原因の54.2%が点眼薬であったと報告されています。 複数の点眼薬を使用している患者や、長期に同一の目薬を使い続けている患者で、眼囲の湿疹がなかなか改善しない場合、この逆説を疑うべきです。
主な原因成分は以下の通りです。
逆説的リスクとはこういうことです。つまり、緑内障の治療に使っている点眼薬が眼囲皮膚炎を起こし、その皮膚炎を治すためにステロイドを使うことで今度はステロイド緑内障を引き起こす、という負のサイクルが起こりえます。
適切な対処はシンプルです。まず原因点眼薬の特定(パッチテストや成分確認)→防腐剤フリー製剤への切り替えを検討する、この流れが推奨されます。 処方見直しの1回の確認が、長期的な問題を解消する可能性があります。