リサンキズマブ商品名スキリージの作用機序と適応症

リサンキズマブの商品名「スキリージ」とはどんな薬なのか?作用機序・適応疾患・投与方法・副作用・施設要件まで医療従事者が知っておくべき情報をまとめました。あなたは投与前の必須確認事項を見落としていませんか?

リサンキズマブの商品名スキリージが持つ適応症と使い方

スキリージの適応症は乾癬だけと思い込むと、患者に最適な治療機会を逃すリスクがあります。


🔑 この記事の3つのポイント
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商品名と一般名

リサンキズマブ(遺伝子組換え)の商品名は「スキリージ(Skyrizi)」。製造販売はアッヴィ合同会社で、2019年に乾癬を適応として国内承認された。

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適応症は6疾患以上

尋常性乾癬・乾癬性関節炎・膿疱性乾癬・乾癬性紅皮症・掌蹠膿疱症・クローン病・潰瘍性大腸炎に対応。剤形によって適応が異なる点に注意が必要。

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投与前に必須の確認事項

活動性結核・重篤な感染症は禁忌。投与前に結核スクリーニング(インターフェロンγ遊離試験またはツベルクリン反応検査+胸部X線)が義務付けられている。


リサンキズマブの商品名「スキリージ」とは何か:基本プロフィール

リサンキズマブ(遺伝子組換え)は、商品名「スキリージ(Skyrizi)」として販売されているヒト化抗ヒトIL-23p19モノクローナル抗体製剤です。製造販売元はアッヴィ合同会社で、もともとベーリンガーインゲルハイムとアッヴィの業務提携のもとで開発された経緯を持ちます。米国では「SKYRIZI」という同じ名称で流通しており、グローバルで一貫したブランド展開がなされています。


2019年3月26日に国内で製造販売が承認され、同年5月22日に薬価収載・発売が開始されました。発売当初は乾癬のみが適応でしたが、その後の臨床試験で有効性が相次いで確認され、適応疾患が広がっています。2022年9月にクローン病、2023年5月に掌蹠膿疱症、そして2024年6月には潰瘍性大腸炎が追加承認されました。


つまり、スキリージは「皮膚疾患専用」ではなく、消化器疾患にも対応した幅広い生物学的製剤です。


国内での現在の適応疾患は以下のとおりです。


疾患カテゴリ 対象疾患
皮膚疾患 尋常性乾癬、乾癬性関節炎(関節症性乾癬)、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、掌蹠膿疱症
消化器疾患(IBD) クローン病(寛解導入・維持)、潰瘍性大腸炎(寛解導入・維持)


いずれも「既存治療で効果不十分な場合」という条件がつきます。これが原則です。


参考:スキリージの最新適応情報についてはアッヴィ合同会社の医療関係者向け情報サイトで確認できます。


A-CONNECT スキリージ製品情報(アッヴィ合同会社)


リサンキズマブの商品名スキリージの作用機序:IL-23のp19を狙う理由

スキリージの最大の特徴は、IL-23の「p19サブユニット」を選択的に阻害する点にあります。IL-23はp40とp19という2つのサブユニットから構成されるサイトカインです。以前の生物学的製剤(ステラーラ®=ウステキヌマブ)はIL-12とIL-23の両方を阻害するためp40サブユニットを標的にしていましたが、スキリージはIL-23に特有のp19サブユニットだけを選択的にブロックします。


この「選択性の高さ」が大きな意味を持ちます。IL-12はIL-23と異なり、Th1細胞を介した感染防御にも関わっています。IL-12まで阻害してしまうと、感染防御機能に影響が出る可能性が否定できません。p19のみを標的とすることで、IL-12の働きには干渉せずにIL-23関連の炎症シグナルを遮断できる設計になっています。これは意外ですね。


IL-23がTh17細胞を活性化し、そのTh17細胞がIL-17Aを産生することで乾癬・クローン病・掌蹠膿疱症などの炎症が持続するというメカニズムが現在広く支持されています。スキリージはその上流でIL-23を抑えることで、Th17→IL-17Aという炎症カスケード全体を断ち切る働きをします。


つまり、IL-17A阻害薬(コセンティクス®、トルツ®)よりも「より上流で炎症を制御している」ということです。


同じIL-23 p19阻害薬として国内で使用できる薬剤には、トレムフィア®(グセルクマブ)やオンボー®(ミリキズマブ)があります。それぞれ適応疾患・投与間隔・製剤形態が異なるため、患者の状態に合わせた選択が求められます。


参考:スキリージの作用機序についてより詳しい情報は以下から確認できます。


スキリージ作用機序(クローン病・潰瘍性大腸炎)- A-CONNECT(アッヴィ)


リサンキズマブの商品名スキリージの剤形と用法・用量:疾患ごとに異なる投与設計

スキリージは適応疾患によって、使用する剤形・投与量・投与経路がすべて異なります。「乾癬と同じ感覚でクローン病に使う」という誤認は、投与量の違いを引き起こすリスクがあります。疾患ごとに把握することが条件です。


現在、スキリージには以下の剤形ラインナップがあります。


  • スキリージ皮下注75mgシリンジ 0.83mL
  • スキリージ皮下注150mgシリンジ 1mL
  • スキリージ皮下注150mgペン 1mL
  • スキリージ皮下注180mgオートドーザー(潰瘍性大腸炎維持療法用)
  • スキリージ皮下注360mgオートドーザー(クローン病・潰瘍性大腸炎維持療法用)
  • スキリージ点滴静注600mg(クローン病・潰瘍性大腸炎導入療法用)


以下に疾患別の用法・用量をまとめます。


疾患 投与経路 用量・間隔
尋常性乾癬・掌蹠膿疱症 皮下注射 150mg(初回・4週後・以降12週毎)※状態により75mgも可
クローン病(導入) 点滴静注 600mgを0・4・8週に静注
クローン病(維持) 皮下注射 360mgを8週毎に皮下投与
潰瘍性大腸炎(導入) 点滴静注 1200mgを0・4・8週に静注
潰瘍性大腸炎(維持) 皮下注射 180mgを8週毎(状態により360mgも可)


乾癬における12週毎の皮下投与という投与頻度の少なさが、スキリージの大きなメリットのひとつです。他の乾癬用生物学的製剤と比較すると、コセンティクス®は2週間毎、イキセキズマブは維持期で2週毎、ルミセフ®も2週毎での投与が必要です。スキリージとステラーラ®だけが12週毎(約3カ月に1回)という設計になっています。これは使えそうです。


また、スキリージは現時点で乾癬・掌蹠膿疱症のいずれにおいても患者による自己注射は認められていません。必ず医療従事者が投与する必要があります。IBDで使用する皮下注製剤(360mg・180mgオートドーザー)についても、添付文書の最新情報を随時確認してください。


参考:PMDAに掲載されているスキリージの添付文書(最新版)は以下から入手できます。


PMDA 医療用医薬品情報 スキリージ(医療関係者向け)


リサンキズマブの商品名スキリージの有効性エビデンス:数字で見る治療効果

スキリージの有効性を理解するうえで、主要な臨床試験の結果を把握しておくことは実臨床に直結します。乾癬領域での代表的な試験として、ウステキヌマブとの直接比較を行ったultIMMa-1試験・ultIMMa-2試験があります。


両試験において、治療16週時点でのPASI 90(皮疹面積・重症度スコアの90%以上の改善)達成率はスキリージ群が74.8〜75.3%であったのに対し、ウステキヌマブ群は42.0〜47.5%にとどまりました。約30ポイント以上の差があります。さらに、sPGA 0/1(医師による静的総合評価でほぼ消失〜完全消失)の達成率でも、スキリージ群が83.7〜87.8%、ウステキヌマブ群が61.6〜63.0%でした(いずれもp<0.0001)。


クローン病領域では、ADVANCE試験・MOTIVATE試験で12週時点の臨床的寛解達成率が43.5%(プラセボ群:11.4%)、内視鏡的改善達成率が40.3%(プラセボ群:12.2%)と示されています。さらに注目すべきは、SEQUENCE試験でウステキヌマブとの直接比較が行われ、1年時点での持続的な内視鏡的寛解率がリサンキズマブ群32%・ウステキヌマブ群16%と、リサンキズマブの優越性が示された点です(p<0.0001)。これはリサンキズマブ商品名スキリージにとって重要な転換点となった試験です。


厳しいところですが、あくまでこれらのエビデンスは試験環境での数値であり、実臨床での個別患者に対する効果とは異なる場合もあります。効果判定の目安は投与開始から16週とされており、16週以内に効果が認められない場合には治療継続の再検討が必要です。


参考:クローン病のSEQUENCE試験の詳細は以下で確認できます。


クローン病治療薬リサンキズマブがウステキヌマブとの直接比較で良好な結果(Rare Snet)


リサンキズマブの商品名スキリージの副作用と投与前スクリーニングの実務ポイント

スキリージの禁忌は3つ、すなわち「重篤な感染症の患者」「活動性結核の患者」「本剤成分に対し過敏症の既往歴のある患者」です。この3つは必須です。


副作用として臨床試験で報告された頻度の高いものは上咽頭炎(4.2%)・咽頭炎(1.8%)などの上気道感染症です。なお、IL-23 p19を阻害することでTh17→IL-17の経路が抑制されるため、IL-17阻害薬で問題になりやすい黄色ブドウ球菌感染症・カンジダ感染症のリスクはやや低い傾向があります。ただし、IL-17を間接的に下げることで細菌・真菌への抵抗性が変化する可能性は否定できず、感染症全般への注意は必要です。


重大な副作用としては重篤な感染症(敗血症・髄膜炎・腎盂腎炎等:0.7%)および重篤な過敏症反応(アナフィラキシー等:0.1%)の報告があります。投与後の経過観察が非常に重要です。


投与開始前に必ず行うべきスクリーニング検査は以下のとおりです。


  • ✅ 結核に関する十分な問診
  • 部X線検査
  • ✅ インターフェロンγ遊離試験(IGRA)またはツベルクリン反応検査
  • ✅ 必要に応じ胸部CT検査
  • ✅ B型肝炎ウイルス(HBs抗原・HBs抗体・HBc抗体)のスクリーニング


結核の既往歴のある患者や潜在性結核感染が疑われる患者には、原則として抗結核薬による予防投与を実施したうえで本剤を開始することが求められます。生ワクチン(BCG・麻疹・風疹など)の接種も、投与期間中は禁忌です。インフルエンザワクチン等の不活化ワクチンは接種可能ですが、担当医への事前相談を患者に促すことが重要です。


乾癬に対してスキリージを使用する医療機関は、日本皮膚科学会が定める「生物学的製剤使用承認施設」の条件を満たす必要があります。具体的には、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医の常勤、呼吸器内科・感染症専門医・放射線専門医との連携体制の整備、導入前スクリーニング検査の実施体制などが求められています。クリニックでの導入は原則として維持療法に限定される点も、注意が必要な運用ルールです。


参考:乾癬生物学的製剤の使用施設条件の詳細は日本皮膚科学会が公開している以下の資料で確認できます。


医師および医療施設の条件(日本皮膚科学会)PDF