創傷被覆材一覧と種類別の選び方・使い分けガイド

創傷被覆材の一覧を種類別に整理し、ハイドロコロイドやポリウレタンフォームなど主要な素材の特徴と使い分けを解説。あなたの現場では本当に最適な被覆材を選べていますか?

創傷被覆材の一覧と種類・選び方の完全ガイド

湿潤環境を保つ被覆材を使うと、乾燥管理より治癒速度が平均40%速まるという報告があります。


この記事の3つのポイント
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創傷被覆材は7カテゴリに分類される

ハイドロコロイド・ポリウレタンフォーム・ハイドロゲルなど素材ごとに特性が異なり、創傷の状態に合わせた選択が治癒を左右する

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滲出液の量が選択の第一基準

少量・中等量・多量それぞれに適した製品が異なり、誤った選択は浸軟や感染リスクを高める可能性がある

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保険適用区分を把握することが重要

創傷被覆材は保険償還価格と算定ルールが製品カテゴリによって異なるため、正しい知識が請求ミス防止につながる

創傷被覆材一覧:主要7カテゴリと代表的製品


創傷被覆材は素材と機能によって大きく7つのカテゴリに分類されます。それぞれが異なる創傷環境に対応しており、適切な選択が治癒期間を左右します。


以下に主要カテゴリと代表製品を一覧で整理します。


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カテゴリ 主な素材・構造 代表製品例 適応創傷
ハイドロコロイド CMC・ゼラチン・ペクチン デュオアクティブ、コムフィール 軽度〜中等度の滲出液、浅い褥瘡
ポリウレタンフォーム 発泡ポリウレタン メピレックス、バイアテン 中等量〜多量の滲出液、褥瘡
ハイドロゲル 水分含有ゲル(90%以上が水) イントラサイト、グラニュゲル 乾燥した壊死創、痂皮軟化
アルギン酸塩 海藻由来繊維 カルトスタット、ソーブサン 多量の滲出液、出血傾向創
ハイドロファイバー カルボキシメチルセルロース繊維 アクアセル、アクアセルAg 感染リスクのある多量滲出液創
ポリウレタンフィルム 薄膜透明フィルム テガダーム、オプサイト 浅い創・縫合創の保護、二次ドレッシング
銀含有被覆材 上記各素材+銀イオン メピレックスAg、アクアセルAg 感染創・バイオフィルム形成疑い

カテゴリごとに吸水メカニズムが根本的に異なります。たとえばアルギン酸塩はゲル化により滲出液を繊維内に閉じ込めますが、ポリウレタンフォームは蒸発・拡散で水分を逃がす仕組みです。つまり「吸う」と「蒸散させる」は全く別の動作ということです。


現場では見た目が似ているからといって代替使用するケースがありますが、吸水メカニズムの違いを無視すると浸軟や乾燥という正反対のトラブルが起きます。これは基本です。


創傷被覆材の選び方:滲出液量・創傷深度・感染の有無

被覆材選択の判断軸は主に3つです。①滲出液の量、②創傷の深度、③感染・バイオフィルムの有無。この3軸を順番に確認するだけで、選択肢がかなり絞られます。


🔵 滲出液量による選択ガイド

  • 少量(ほぼ乾燥)→ ハイドロゲル・ハイドロコロイドで湿潤環境を補完
  • 中等量 → ハイドロコロイド・ポリウレタンフォームが主力
  • 多量 → アルギン酸塩・ハイドロファイバー・高吸収フォームが適切
  • 非常に多量(1日複数回交換が必要なレベル)→ ハイドロファイバーまたはスーパーアブソーバント系

創傷深度については、浅い擦過創や縫合創にはフィルム材や薄手のハイドロコロイドで十分です。一方、ポケットや空洞を伴う深い創にはアルギン酸塩やハイドロファイバーを充填材として使用し、上から二次ドレッシングを重ねる構成が標準です。


感染が疑われる場合、通常の湿潤被覆材をそのまま使うのは危険です。閉鎖環境が嫌気性菌の増殖を促す可能性があるからです。感染創には銀イオン含有製品(アクアセルAg、メピレックスAgなど)を第一選択とし、状態改善後に通常被覆材へ移行するフローが推奨されます。


感染コントロールが条件です。感染が残ったまま湿潤管理を続けると悪化します。


なお、バイオフィルムが疑われるケースでは被覆材の交換頻度を短縮(72時間以内)し、交換時のデブリードマンと組み合わせることが重要です。これは意外と見落とされがちな点です。


創傷被覆材一覧に基づく褥瘡ステージ別の使い分け

褥瘡治療において、DESIGN-R®スコアと被覆材の組み合わせは治癒速度に直接影響します。日本褥瘡学会の「褥瘡予防・管理ガイドライン(第5版)」では被覆材の推奨グレードが明記されており、現場での選択根拠として活用できます。


日本褥瘡学会 褥瘡予防・管理ガイドライン(第5版):被覆材の推奨グレード根拠として参照
🟡 ステージ別おすすめ被覆材

  • ステージⅠ(発赤のみ)→ 予防目的のポリウレタンフォーム(薄型)、シリコーン系被覆材
  • ステージⅡ(水疱・びらん)→ ハイドロコロイド、薄型フォーム材
  • ステージⅢ(全層皮膚欠損)→ ポリウレタンフォーム、アルギン酸塩+二次ドレッシング
  • ステージⅣ(骨・腱露出)→ ハイドロファイバー充填+フォーム二次材、陰圧閉鎖療法との併用も検討
  • DTI(深部損傷褥瘡)→ 経過観察しながら保護目的の非粘着性フォーム

ステージⅣの創では被覆材単独での管理には限界があります。外科的デブリードマンや陰圧閉鎖療法(NPWT)との組み合わせが現実的です。被覆材はNPWT用の専用フォームが使われることが多く、汎用フォームとは素材硬度が異なります。


ステージが深いほど「被覆材の交換技術」も難易度が上がります。ポケット内への充填が不十分だと空洞に死腔が残り、感染源になります。充填は緩すぎず、圧迫しすぎずが原則です。


創傷被覆材の保険算定ルールと現場でのコスト管理

ここは医療従事者にとって特に実務直結の内容です。創傷被覆材の保険適用は「真皮に至る創傷」が原則であり、すべての被覆材が同じ算定区分になるわけではありません。


診療報酬上の主な区分は以下です。


  • 📌 創傷被覆材(真皮に至る創傷用):10cm²未満・10cm²以上100cm²未満・100cm²以上など面積区分で点数が異なる
  • 📌 皮膚欠損用創傷被覆材:真皮を越える欠損に使用。さらに「標準型」「異形型(シリコン含有等)」で区分が分かれる
  • 📌 非固着性シリコンガーゼ:別区分として算定可能な製品あり

注意が必要なのは、同一製品でも創傷の状態や記録の記載によって算定できる区分が変わる点です。たとえばメピレックスは「標準型」「ボーダー型」で保険区分が異なる場合があります。記録に創傷サイズと深度を明記することが算定根拠として必須です。


つまり記録の質が算定の正確さを決めます。


レセプト請求時のミスを防ぐには、各製品の薬価基準収載情報と添付文書の適応を確認するのが確実です。製品ごとの保険区分は厚生労働省の「保険医療材料等の基準」または各メーカーのMSに確認するのが最速です。


厚生労働省 保険医療材料の基準:創傷被覆材の保険収載区分と点数確認に活用

創傷被覆材選択で見落とされがちな「周囲皮膚への影響」という独自視点

創傷本体のケアに集中するあまり、被覆材の粘着剤が周囲の健常皮膚に与えるダメージは軽視されがちです。これが繰り返しの交換による医療関連機器圧迫創傷(MDRPU)や皮膚剥離(Skin Tear)を引き起こす主因の一つです。


実は皮膚剥離のリスクは被覆材の「粘着強度」よりも「剥離角度」と「剥離速度」に強く依存します。研究では180°方向への急速剥離が最もストレスが高く、皮膚剥離発生率を有意に上げることが報告されています。これは意外ですね。


対策として有効なのは以下の3点です。


  • 🔸 剥離時は皮膚を押さえながら、ゆっくり皮膚に沿わせるように(角度0°方向へ)剥がす
  • 🔸 シリコン系粘着剤の被覆材(メピレックス等)は剥離時の引張力が低く、高齢者や浮腫皮膚に有利
  • 🔸 剥離剤(リムーバー)の使用:シリコンオイル系スプレーを使うと粘着力を下げてから剥がせる

高齢者の皮膚は真皮と表皮の接着力が若年者の30〜50%程度まで低下するとされています。頻回交換が必要なケースでは、被覆材の粘着タイプを意識的に選ぶことが「創傷を作らないケア」につながります。


周囲皮膚の保護が基本です。


スキンケア製品との組み合わせも重要です。被覆材を貼る前に皮膚保護クリームや非アルコール系の皮膚被膜剤(3M キャビロンなど)を使うことで、粘着剤の直接刺激を和らげる効果があります。交換のたびに皮膚状態を記録し、悪化傾向があれば被覆材の種類を変える判断が求められます。


日本褥瘡学会 スキンケアガイドライン:周囲皮膚保護と剥離刺激低減の根拠として参照




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