マクロゴール軟膏と吸水クリームの違いと正しい使い分け

マクロゴール軟膏と吸水クリームはどちらも褥瘡ケアで使われますが、基剤の性質と適応の違いを正しく理解できていますか?混合比率や使用場面を誤ると治癒が遅れるリスクがあります。

マクロゴール軟膏と吸水クリームの基剤と使い分けを徹底解説

吸水クリームを「湿潤型の創にも使える」と思って塗布すると、創面の悪化を招くことがあります。


📋 この記事の3ポイント要約
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基剤の違いが治療成否を左右する

マクロゴール軟膏(水溶性基剤)は過剰な滲出液を吸収し、吸水クリーム(w/o型乳剤性基剤)は乾燥型の創面を保護する。全体の95%を占める基剤の性質が、治癒環境を決定する。

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混合比率3:7で全く異なる機能を生む

吸水クリーム(3):マクロゴール軟膏(7)の混合外用剤は、上皮化を促す目的に特化した独自のブレンド。単剤では対応できない創面に対応できる。

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乳剤性基剤は湿潤型に使わない

吸水クリームを含む乳剤性基剤はo/w・w/o型を問わず、湿潤型(浸出液の多い創)への使用はNG。水溶性基剤(マクロゴール軟膏)が正しい選択肢。


マクロゴール軟膏の基剤特性と吸水クリームとの根本的な違い


褥瘡外用薬を正しく選ぶためには、「主薬」よりも「基剤」を先に理解する必要があります。外用薬全体の構成のうち、薬効成分(主薬)はわずか5%以下。残り95%以上は基剤が占めています。


つまり、基剤が正しくないと主薬の効果は発揮されません。


マクロゴール軟膏はポリエチレングリコール400とポリエチレングリコール4000を等量混合した水溶性基剤です。商品名では「ソルベース®」として知られており、創傷面の過剰な滲出液を吸収し、適度な湿潤環境を維持することで細胞増殖因子の増加を誘導し、創傷治癒を促進します(日本薬局方マクロゴール軟膏 添付文書 2023年改訂)。


一方、吸水クリームはw/o型(油中水型)の乳剤性基剤で、外相が油性、内相に水相を持つ構造です。乾燥型の創面への補水・保護を目的としており、適応は乾燥型です。


項目 マクロゴール軟膏 吸水クリーム
基剤分類 水溶性基剤 乳剤性基剤(w/o型)
主な機能 吸水性(滲出液吸収) 補水・保護(乾燥型向け)
湿潤型への適応 ◎(推奨) ✕(禁忌的使用)
乾燥型への適応 △(過乾燥に注意) ◎(推奨)
水洗い 容易 やや困難
代表商品名 ソルベース® 吸水クリーム(処方基剤)


水溶性基剤であるマクロゴールは、水に極めて溶けやすく高い吸湿性を持つため、創面を乾燥させる傾向があります。これが「湿潤型の創」に有効な理由であり、同時に乾燥型の創に単独使用するときは過乾燥に注意が必要な理由でもあります。


基剤の分類が条件です。まずここを押さえておけば、どちらを選ぶべきかが判断できます。


参考:マルホ株式会社「剤形からみた基剤の分類と特徴」(服薬指導に役立つ皮膚外用薬の基礎知識)


マクロゴール軟膏が褥瘡治療で果たす吸水機能と作用機序

マクロゴール軟膏の吸水性は、単に「水を吸う」だけではありません。創傷面の滲出液を吸収すると同時に基剤自体が溶解・流動化するため、創内の有害物質や細菌産物を基剤とともに除去する作用も持ちます。これが「洗い流しやすい」という特徴と連動しています。


そのしくみを整理すると、次のようになります。


  • 🔵 創面の過剰な滲出液を吸収し、浮腫を改善させる
  • 🔵 基剤が溶解することで創内の老廃物・細菌産物を除去しやすくする
  • 🔵 適度な湿潤環境を維持して細胞増殖因子(EGF・TGF-βなど)の増加を誘導する
  • 🔵 水で容易に洗い流せるため処置時の創面への損傷が少ない


高齢者の下肢には、実に3人に1人の割合で浮腫が生じているといわれています(皮膚専門医ブログ「hifuka-senmoni-s.com」)。浮腫のある部位に生じた褥瘡では創面が過湿潤になりやすく、水溶性基剤であるマクロゴール軟膏の吸水作用が特に有効です。これは使えそうですね。


一方で注意が必要なのは、マクロゴール軟膏の吸水性は強いため、乾燥傾向のある創面に使用すると過剰に創を乾かしてしまう点です。小さな浅い創では、3mm以上の厚さで均等に充填するのが基本です。「塗布」ではなく「充填」という感覚で使う方が正確に言うと適切です。


また、滲出液を吸収すると基剤が溶けて流れやすくなるため、ガーゼと必ず併用します。単独で貼付する場合はフィルム材は不向きで、多孔性ポリエステルフィルムガーゼ(メロリンガーゼ®など)との組み合わせが創傷管理の標準的な手技です。


参考:日本薬局方マクロゴール軟膏(ソルベース)添付文書 薬効薬理・作用機序
日本薬局方マクロゴール軟膏 添付文書(JAPIC)|作用機序・配合変化情報


吸水クリームとマクロゴール軟膏を3:7で混合する理由と適応場面

吸水クリーム(3):マクロゴール軟膏(7)の混合外用剤は、「エキスパート・F・ブレンド」と呼ばれる古田メソッドのブレンド軟膏群のひとつです。なぜあえてこの2種を混合するのか、その背景には湿潤環境の精密なコントロールという考え方があります。


上皮化に適した湿潤環境は、肉芽形成期よりも「やや乾燥した状態」です。


たとえばゲーベン®クリームは肉芽形成に優れますが、補水性基剤であるため上皮化の段階では過湿潤となり、上皮化が停滞するケースがあります。そこで登場するのがこの混合外用剤です。マクロゴール軟膏の吸水作用で創をドライ方向に調整しつつ、吸水クリームのパラオキシ安息香酸メチル(パラベン)が防腐・抗菌作用として機能します。


この混合外用剤の主な適応を整理すると以下のとおりです。


  • ✅ 肉芽が皮膚面の高さまで盛り上がり、あとは上皮化するだけの浅い創
  • ✅ 浅い潰瘍・びらん・水疱形成・スキンテア(皮膚裂傷)
  • ✅ ゲーベンクリームで上皮化が進まない症例のステップアップ選択肢


なお、スキンテアへの外用療法としてもこの混合薬は有用との報告があります(J-STAGE:吸水クリーム・マクロゴールの混合外用薬によるスキン-テア治療、日本皮膚外科学会誌 2024年)。スキンテアは一般的に創傷被覆材が使われることが多いですが、外用薬での対応も選択肢のひとつです。


ただし、注意点も明確にあります。巨大な創に使用した場合、マクロゴールの強い吸水作用により平坦化した肉芽が再度陥凹するリスクがあります。さらに、クリティカルコロナイゼーション(ぬめりを伴う菌膜状態)に移行する例も報告されています。


そのため、広い創面では「辺縁部のみに混合外用剤を使い、中央部はゲーベンクリームを継続する」という分割使用が有効な対策のひとつです。この方法を取る場合、担当薬剤師との連携で院内調製の精度を確認することが実践的な確認ポイントになります。


また、このブレンド軟膏は30日間の安定性が検証済みであることも、在宅療養・施設での継続使用において実務上の安心材料です。


参考:薬ゼミVol.62「褥瘡を早くきれいに治す方法(第15回)」 古田勝経
薬ゼミプラスVol.62|褥瘡外用薬ブレンドの配合比と湿潤調節機能(PDF)


マクロゴール軟膏使用時の配合変化と絶対に避けるべき組み合わせ

マクロゴール軟膏は水溶性基剤である性質から、いくつかの薬剤との配合変化に注意が必要です。添付文書には明確な記載があり、現場で見落とされやすいリスク情報です。


  • ⚠️ <strong>ヨウ素・タンニン酸・フェノール・サリチル酸との配合:液化が起こる(物理的変質)
  • ⚠️ ペニシリン・バシトラシンとの混合:これらの薬剤が速やかに不活性化される
  • ⚠️ スルファミン・クリサロビン・水銀製剤+サリチル酸との混合:着色を生じる(効力には変化なし)


特に注意が必要なのは、ペニシリン系薬剤との配合禁忌です。


院内で「抗菌外用剤+マクロゴール基剤」のブレンド処方を行う際、ペニシリン系の成分が含まれていないかを必ず確認します。抗菌作用が不活性化された状態で投与し続けても治療効果は期待できません。見落とすと損失になるのはこういった事例です。


もう一点、乳剤性基剤である吸水クリームとの混合については、ステロイド軟膏との混合時に起こる「乳化剤不足による分離」とは異なるメカニズムが働きます。吸水クリームとマクロゴール軟膏の混合は安定性が確認されているため、3:7の比率を守れば問題ありません。ただし、ブロメライン軟膏(タンパク分解酵素)とマクロゴール基剤含有製剤の混合は、ブロメラインの効果減弱につながるリスクがあるため、用時調製が原則です。


配合変化の確認が条件です。調剤段階で薬剤師がこれを押さえておくことで、投与後の治療停滞を未然に防げます。


参考:管理薬剤師.com「基剤の種類と特徴」(基剤の配合・特性一覧)
管理薬剤師.com|軟膏基剤の種類・特徴・乳化機序の解説ページ


医療従事者が現場で使える吸水クリームとマクロゴール軟膏の選択フローとよくあるミス

実際の褥瘡ケアでは「何を塗ればよいか」を逆算するより、「創の状態を正確に読む」ことから始めるのが基本です。現場でよく見られるミスをもとに、判断フローを整理します。


現場でよく見られるミスは、次の3パターンに集約されます。


  • ミス①:滲出液が多い創に吸水クリーム(w/o型)を使用する → 乳剤性基剤は湿潤型に使わないが原則
  • ミス②:上皮化段階の創にゲーベン®クリームを継続する → 過湿潤となり上皮化が停滞する
  • ミス③:マクロゴール軟膏を乾燥創に単独使用する → 過乾燥で肉芽が陥凹するリスクあり


これらを回避するための判断フローを簡単にまとめます。


創面の状態 推奨基剤 代表的外用薬
滲出液が多い(湿潤型) 水溶性基剤 マクロゴール軟膏・カデックス®・ユーパスタ®
乾燥型・保護が必要 油脂性基剤・w/o型乳剤性 白色ワセリン・吸水クリーム・ヒルドイドソフト®
壊死・感染を伴う 補水性乳剤性(o/w型) ゲーベン®クリーム・オルセノン®軟膏
上皮化段階(肉芽が平坦) 弱吸水性混合基剤 吸水クリーム(3)+マクロゴール軟膏(7)
浮腫を伴う四肢の創 水溶性・ヨウ素含有基剤 カデックス®・ユーパスタ®・マクロゴール基剤製剤


在宅・施設での褥瘡管理では、この判断を看護師やヘルパーが行う場面もあります。そのため、医療従事者が事前に「この創の状態になったら外用薬を変更する」というルールを整理して伝えることが、質の高い創傷管理につながります。


外用薬の塗布量についても触れておくと、浅い創では創面から少なくとも3mm程度の厚さで充填するのが目安です。薄く塗るだけでは基剤の吸水・補水機能が十分に発揮されません。これは現場で軽視されがちなポイントです。


厳しいところですね。日常的なケアだからこそ、基本を正確に守ることが治癒スピードに直結します。


なお、在宅環境での褥瘡外用薬の選択・管理については、訪問薬剤師との連携や、褥瘡ケアチームへの相談も有効な手段です。「フルタメソッド」など薬剤師主導のアプローチが広まりつつある中、薬剤師が積極的に選択判断に関わることで治癒期間の短縮とコスト削減が報告されています(小林記念病院・古田勝経センター長による臨床報告)。


参考:日経メディカル「褥瘡の外用薬は『塗布』でなく『充填』しよう」
日経メディカル|褥瘡外用薬の充填量・塗布方法の実践的解説(古田勝経氏コラム)






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