「とりあえずリンデロンVG」の処方が、耐性菌を院内に育てているかもしれません。
リンデロンVGは、2種類の有効成分を配合したコンビネーション外用薬です。名称の「V」はベタメタゾン吉草酸エステル(Betamethasone <strong>Valerate)、「G」はゲンタマイシン硫酸塩(Gentamicin sulfate)の頭文字を表しています。この2成分がどのように働くかを把握することが、正しい使い方の第一歩です。
ベタメタゾン吉草酸エステルは、グルококルチコイド受容体に結合して核内に移行し、炎症性サイトカインや化学メディエーターの産生を抑制します。血管収縮作用も強く、同じストロングクラスのフルオシノロンアセトニドよりも収縮効果が高いと報告されています。これが赤み・腫れ・かゆみを速やかに鎮める主たる理由です。
ゲンタマイシンはアミノグリコシド系の抗生物質で、細菌のリボソームに結合してタンパク質合成を阻害し、さらに細胞膜に直接損傷を与えて殺菌作用を発揮します。黄色ブドウ球菌などのグラム陽性球菌に対して高い効果を示し、グラム陰性菌にも広範な抗菌スペクトルを持ちます。
つまり「炎症の火を消す(V)」と「細菌という侵入者を倒す(G)」の2役を1本の外用薬で担えるのがリンデロンVGの強みです。ただし、この「G」の存在が処方上の判断を複雑にする点でもあります。
| 成分 | 濃度 | 主な働き |
|---|---|---|
| ベタメタゾン吉草酸エステル | 0.12% | 抗炎症・血管収縮・免疫抑制 |
| ゲンタマイシン硫酸塩 | 0.1%(力価) | 殺菌(グラム陽性・陰性菌) |
ステロイドの強さは5段階中、上から3番目の「ストロング(Ⅲ群)」クラスに分類されます。つまり体幹・四肢の炎症には十分な強さを持ちながら、顔や陰部などの皮膚が薄い部位では過剰な吸収が起こりやすいクラスでもあります。強さが「原則です」として頭に入れておく必要があります。
適応となる主な疾患は次のとおりです。
逆に、水虫(白癬)・カンジダ・ヘルペスなどの感染症には禁忌です。ステロイドが局所免疫を抑制するため、一時的に症状が落ち着いたように見えても菌の増殖を許してしまい、結果的に病態を悪化させます。「最初だけ効いた気がした」という患者の申告があった場合、感染症の可能性を疑うことが大切です。
参考リンク(適応・禁忌・作用機序の詳細、皮膚科専門医・医学博士による解説)。
リンデロンVG(ベタメタゾン・ゲンタマイシン) | こばとも皮膚科
用量・用法を正確に伝えることは、医療従事者の重要な役割です。リンデロンVGの用法の原則は「1日1〜数回、患部に適量を薄く塗布する」ですが、この「適量」が患者に伝わりにくいのが現実です。
そこで使う概念が「FTU(Finger Tip Unit:フィンガーティップユニット)」です。成人の人差し指の先端から第1関節までチューブから絞り出した量が1FTUで、これが約0.5gに相当します。1FTU=大人の手のひら2枚分の面積をカバーできる目安量